システナという会社について、
- どんな会社なのか
- 業績はどうなのか
についてまとめた。
「業績の推移だけ知りたい!」という方は、目次からクリックorタップして飛んでほしい。
どんなことをやっている会社なの?
四季報から引用すると、次のように書いてある。
ソフト開発支援が主。端末向けから車載向け等にシフト加速。運用、保守も。
これだけではイメージしにくい。
事業としては、
- ソリューションデザイン事業
- フレームデザイン事業
- ITサービス事業
- ソリューション営業
- クラウド事業
- 投資育成事業
- 海外事業
等を運営している。それぞれについて詳しく見ていこう。
1.ソリューションデザイン事業
ここでやっていることは、ソリューション(サービス)のデザイン(企画・設計・開発・検証)を支援すること。
システナ社が得意とするのは、
- 自動運転・車載システム
- ネットビジネス・Webサービス(決済システムなど)
- AI、IoT、ロボット
などだ。これらを導入したい企業をサポートする。「AIとかIoTとかよくわかんねーけど、我が社でも活用したい」みたいなことを考えている企業に対して支援をするのが仕事ということだ。
車載システム事業
中でも車載システム事業はシステナ社の得意分野だ。中核事業といってもいい。
車の運転をより楽しく、わかりやすく、簡単にできるようなシステムをデザインする、情報分野の受注が拡大しているとのことだ。
最近は車もIT化が進行している。デジタルモニターは当たり前になったし、スマホと連動して空調を入れたり等もできるようになった。電気自動車が普及しはじめたこともあり、この流れは加速する一方だ。車をコンピュータによるITシステムで制御する時代が来ている。このようなITシステムの構築を支援するのが、車載システム事業の主な仕事だ。高性能なカーナビシステムなども提供している。
車内空間だけではなく、運転を制御するシステムにも力をいれている。キーワードは自動運転だ。
完全な自動運転を実現できているわけではないが、乗用車やバス用に安全運転のためのシステムを提供している。自動ブレーキをソフト面から支援する、などだ。これから完全な自動運転を見据えてノウハウを蓄積していくだろう。
ロボット・AI・IoT事業
最近はは人手不足であると騒がれており、ロボットやAIへの需要が増加している。システナ社もロボットやAIをキーワードとしたシステムの開発を行っている。ロボット・AIとセットで用いられることの多いIoT技術も得意だ。
AIやロボットの技術を使いたい企業にシステム開発の支援するこの事業も、今後伸びしろがある。「これらの技術を使いたいけど、俺らには難しい!」みたいな企業の中には、開発を支援するサービスの存在を知らない所もまだまだあるので、売上を伸ばすには営業活動(啓蒙活動)やコンサルティングも重要になってくるだろう。決算資料にもコンサルティングに力を入れると書いてある。
インターネットサービス事業
インターネット通販(eコマース)や電子決済のシステムを手掛ける。四季報によると電子決済のシステムは特に好調とのことだ。
システムの開発だけではなく、webサイトやサービスの企画、コンテンツの運用などについても支援しているようだ。コンサルティング事業にも力を入れているみたいだ。
業務システム事業
オープンソースの活用した低コストな開発、AI等による業務自動化などが主な事業。ユーザー企業が業務にどんどんIT技術を取り入れて業務効率化を目指せるように支援する事業である。キーワードはデジタルトランスフォーメーション(DX)だろう。
DXとはデジタルによる変革のこと。2004年にエリック・ストルターマンが提唱した概念で、現在は「ITを利用して新しい価値を創造し、競争上の優位を確立する事」と捉えられている。
普通の企業が「DXするぞ!」と思っても、技術や知識を持っている人材がいなくて、「何もできない、何をしたらいいのかわからない」となりがち。こうした中でベンダー企業各社は、専門知識がなくてもIT技術を利用できるようなサービスを提供するようになってきた。グーグルの「Cloud AutoML」などが有名である。
システナ社もDXを支援する事業を行っており、DXをテーマとした「Canbus」というサービスは好調だ。Canbusについてはクラウド事業のところでもう少し詳しく解説しようと思う。
その他のキーワード
決算資料にはここで紹介した以外にも、いくつか今後力を入れていくとしている分野が載っている。キーワードだけ紹介しておく。「こんなことに手をつけようと思っているんだな」ということが分かると思う。
事業名 | キーワード |
車載 | シェアリング、MaaS、自動運転、インフォテイメント、コネクテッドカー、安全対策 |
ロボット | コミュニケーションロボット、産業用ロボット、生活ロボット(介護・生活) |
ネットビジネス | オリンピック関連、中堅顧客との取引拡充、AI・IoTなどの技術要素による需要拡大、教育改革、5G関連サービス |
業務システム | 働き方改革、AI・業務自動化、DX、オープンソース活用、人材不足対策 |
最後に、システナ社のホームページからソリューションデザイン事業の紹介文を引用しておく。
長年にわたるモバイル端末の開発で培った豊富なノウハウと実績を基に、高度化する車載機器、電力・防災・航空・交通などの社会インフラ、情報家電やホームセキュリティ、スマートデバイスやWebサービスなど、様々な分野で成長・発展を遂げています。
今後も製品企画、仕様策定および多彩な製品・サービスの開発から検証・性能評価を最先端技術でご支援し、あらゆるモノをつなぐコミュニケーション社会の実現に貢献してまいります。
2.フレームデザイン事業
基幹システムの開発および基盤系システムの設計・構築を行っている。
基幹システムとはなにか、IT用語辞典から引用すると
企業や官公庁などの情報システムのうち、事業や業務の中核に直接関わる重要なシステムのこと。または、全社で共通して利用される、その組織全体の基盤の一部となるシステム。
とのことである。
主に顧客の情報や商品の情報、従業員の情報などを扱うシステムのことを指す。
システナ社では「保険」「銀行」といった顧客を相手に基幹システム開発の実績を上げてきた。なので「保険システム」や「決済システム」が得意である。
最近ではクレジット、電子マネー、仮想通貨といった新しい決済システムに力を入れているようだ。
他にも、今後は「DX」をキーワードにして案件を受注していく方針だという
こちらもシステナ社のホームページから事業の紹介文を引用しておく。
高い信頼性を求められる金融系システム開発において、四半世紀以上にわたり蓄積してきたノウハウ・経験と実績を武器に、金融以外の業種においてもソリューションをご提供するシステナのフレームワークデザイン事業は、お客様から高い評価と厚い信頼を得ています。昨今では、クレジット、電子マネー、仮想通貨などの次世代金融機関向けシステムや、他業種の基幹系システムにおいて、戦略投資から合理化・省力化まで幅広いニーズに応えるサービスの提供に取り組んでいます。
3.ITサービス事業
これはシステム運用に関するアウトソージングを受け付けている事業だ。
システムの保守・監視・運用や、データ入力など、さまざまな面倒くさい作業を代わりにやってくれる事業だ。
2019年度は「windows10移行」「スマートデバイス導入」「セキュリティ商材の販売」などが売上と利益を牽引したという。
ただの便利屋ではなく、技術力の活用や新サービスの導入などを通じて、付加価値の高さを追求していくようだ。
お客様のIT戦略を実現するために、ヘルプデスクやシステム運用などのアウトソーシングサービスを、システナのチーム力によりご提供しています。おもてなしの心を持った社員がお客様の課題解決を実現するため、サービスとソリューションをご提案します。近年、企業では、投資をコア業務へ集中する動きが高まり、企業内のIT投資はアウトソーシング化によるランニングコスト削減が至上命題となっています。システナは、個々のサービスを提供するだけではなく、ALLシステナによるトータル・ソリューション・サービスのご提供により、お客様のビジネスの発展に寄与できる“戦略的パートナー”を目指しています。
出典:システナ社のホームページ
4.ソリューション営業
こちらは営業の部門である。IT関連(パソコン、サーバーやその他周辺機器など)の製品を販売している。
世間では働き方改革が騒がれており、これに関連した「モバイル」「クラウド」、これらを活用するための「セキュリティ」関連がよく売れた。
また、機器の導入からインフラ構築、システム開発、保守運用をまとめて提供するワンストップサービスも好調だ。
ワンストップサービスは一連の工程や関連するサービスをひとつの所がまとめて提供するサービスのこと。顧客からすればいろんな所相手にせずに済むので便利だ。
ワンストップサービスを提供する側からすると、一連の工程をすべて自社サービスで囲い込めるため、収益性が高くなる。
最後にシステナ社のホームページからの引用だ。
企業向け各種IT製品(PC、サーバー、ネットワーク、周辺機器、ソフトウェア等)の販売やシステムインテグレーションサービスを中核に、システナが持つ全てのリソース(モバイルソリューション、システム開発、システムの運用・保守、ヘルプデスク、ユーザーサポート、クラウドサービス)を融合し、ALLシステナの総合営業として、お客様に最適なITソリューションをご提供しています。
5.クラウド事業
システナ社が開発しているクラウド製品の販売が主。中でも「Canbus」というサービスの調子がいい。
Canbusは、データを蓄積/共有/活用できるデータベースであり、社内の部門間における情報共有や管理を強化できる機能が特徴である。
500社以上に導入されて、なおも拡大傾向とのこと。
自社製品の他にも、「Microsoft Azure」「AWS(Amazon Web Services)」「Office 365」といったクラウドサービスの導入も手掛けている。
この事業においても「DX」をキーワードに事業の拡大を進めていくという。
当事業では、「Cloudstep」、「Canbus.」、「Web shelter」を始めとする自社開発のクラウドサービスや、「G Suite」、「Office365」などの著名なクラウドサービスの提案・導入・サポートを通じて、お客様の社内コミュニケーションの改善や業務改善のご支援を行っています
出典:システナ社のホームページ
6.投資育成事業
IoT、ロボット、FinTech、ソーシャルメディア関連の新事業を企画したりする部門。子会社が中心。
IoT、ロボット、FinTech、ソーシャルメディア関連の企画・開発・販売を手掛ける戦略子会社(株)インターネットオブシングスが主体の事業で、Systena America Inc.と協力し、新規事業の育成に取り組んでいます。
出典:システナ社のホームページ
7.海外育成事業
米国シリコンバレーに拠点を持つSystena America Inc.が中心。IoTとセキュリティー強化を通じて、グローバル化に着手している。
セキュリティ関係はStronKey社のサービスが主体。StrongKey社の「Tellaro」というサービスは、データの暗号化によりセキュリティを強化するソフトである。このサービスは日本向けの販売もスタートした。
IoT関係はOne Tech社のサービスが主体。E2E(エンドツーエンド)ソリューションを米国内外で販売している。
米国シリコンバレーに拠点を持つSystena America Inc.を中心に最新のイノベーションを全世界に展開するとともに、海外ベンチャー企業とのコラボレーションによりシステナグループの新たな強みを作り出しています。
出典:システナ社のホームページ
まとめ:システナの事業
システナ社はソフト開発支援が主力の企業であり、主に7つの部門が存在する。
ただの便利屋ではなく、「DX」をキーワードに付加価値の高いソリューションを手掛け、高利益化を目指している。あらゆる企業のIT活用の支援を支援する企業である。
セキュリティとIoTを軸に海外進出にも着手している。海外のサービスを日本に輸入することも手掛けている。
業績の推移(2009年~2018年)
業績や各種指標のデータを2009年から2018年までの10年分集めたので、図表でまとめた。
なお、「2018年」とは「2019年度3月期」のことである。他の年も同様に解釈してほしい。
また、株式の分割が何回か行われているため、すべて現在に基準に直してある。
売上高の推移(単位は[百万円])
2009年 | 3,636 |
2010年 | 39,176 |
2011年 | 30,360 |
2012年 | 31,662 |
2013年 | 33,969 |
2014年 | 36,951 |
2015年 | 42,695 |
2016年 | 46,255 |
2017年 | 54,320 |
2018年 | 59,472 |
近年の売上はきれいな右肩上がり。一定のペースで上昇している場合、需要に対して供給が追いついていないというケースが多い。その場合はまだまだ伸びる。
営業利益の推移(単位は[百万円])
2009年 | 490 |
2010年 | 2,579 |
2011年 | 1,822 |
2012年 | 2,244 |
2013年 | 1,656 |
2014年 | 2,226 |
2015年 | 3,172 |
2016年 | 3,693 |
2017年 | 5,170 |
2018年 | 6,902 |
こちらも近年は右肩上がり。売上以上に急成長している。高付加戦略がうまく行っているのだろう。
売上高営業利益率の推移(単位は[%])
2009年 | 13.5 |
2010年 | 6.6 |
2011年 | 6.0 |
2012年 | 7.1 |
2013年 | 4.9 |
2014年 | 6.0 |
2015年 | 7.4 |
2016年 | 8.0 |
2017年 | 9.5 |
2018年 | 11.6 |
こちらも営業利益の急成長につられ右肩上がり。11.6%はまあまあ優秀だ。決算短信によると15%を目指すらしい。現実的な目標で良いと思う。
2011年の震災のときでも安定しているのも良い。
営業キャッシュフローマージンの推移(単位は[%])
2009年 | -8.3 |
2010年 | 7.5 |
2011年 | 7.2 |
2012年 | 8.1 |
2013年 | 4.4 |
2014年 | 7.5 |
2015年 | 6.4 |
2016年 | 4.9 |
2017年 | 8.0 |
2018年 | 11.9 |
こちらはやや不安定だが、ここ3年は右肩あがり。利益が出るようになって安定してきたか。
EPSの推移(単位は[円])
2009年 | 3.8 |
2010年 | 24.2 |
2011年 | 7.7 |
2012年 | 11.0 |
2013年 | 17.3 |
2014年 | 9.3 |
2015年 | 22.7 |
2016年 | 22.4 |
2017年 | 36.3 |
2018年 | 47.0 |
キレイではないが、大体右肩上がり。悪くない
BPSの推移(単位は[円])
2009年 | 69.7 |
2010年 | 117.6 |
2011年 | 117.7 |
2012年 | 118.0 |
2013年 | 125.5 |
2014年 | 126.9 |
2015年 | 135.5 |
2016年 | 149.6 |
2017年 | 173.5 |
2018年 | 208.1 |
こちらも右肩上がり。あまり増えてない年もあるが、減少する年がないのはいい。優秀な方だと思う。
ROEの推移(単位は[%])
2009年 | 5.5 |
2010年 | 28.9 |
2011年 | 6.6 |
2012年 | 9.3 |
2013年 | 14.2 |
2014年 | 7.3 |
2015年 | 17.2 |
2016年 | 15.7 |
2017年 | 22.4 |
2018年 | 24.6 |
ROEはここ5年位で急上昇した。決算短信によると25%を目指すらしい。2018年の水準を維持し続けるのが目標なのだろう。
ROEに関しては非常に優秀であり1、2年の一発屋でもない。かなり優秀。
配当金の推移(単位は[円])
2009年 | 2.5 |
2010年 | 6.5 |
2011年 | 7.3 |
2012年 | 7.5 |
2013年 | 7.5 |
2014年 | 7.5 |
2015年 | 8.0 |
2016年 | 9.0 |
2017年 | 11.5 |
2018年 | 16.0 |
右肩上がり。減配がないのは優秀。EPSが落ちた年でも減配していないので、配当意識は高めだ。
配当性向の推移(単位は[%])
2009年 | 65.7 |
2010年 | 26.8 |
2011年 | 94.7 |
2012年 | 68.1 |
2013年 | 43.4 |
2014年 | 81.1 |
2015年 | 35.3 |
2016年 | 40.1 |
2017年 | 31.7 |
2018年 | 34.0 |
は昔は高すぎの年もあるが、ココ4年は正常な水準だ。配当性向は40%くらいを掲げている。
IT関連の成長企業にしては配当性向が高めな気がする。自分たちの技術は成熟してきたと考えているか。十分に顧客を囲い込めていると考えているのか。少なくとも安定性には自身があるのかもしれない
自己資本比率は60%近くあるので、結構高め。お金はあるけどいい投資先が見当たらないから配当を出しておこうということなのだろうか。そうだとしたら自社株買いもあるかもしれない。目標のROE増もできるしな。
と思っていた矢先、12月3日に自社株買いの発表があったので、報告しておく。
システナの株価推移(2019/12/16時点)
これらのチャートはヤフーファイナンスより引用。
2015年あたりから株価が急上昇している。この頃からROEなどの水準が上昇していた。
2018年の下旬辺りまでは右肩上がりを続けていたが、それ以降は上がったり下がったりしている。
ちょっと前まではいつ買っても利益が出ていたが、最近では株価が一時的に下がったタイミングを狙わないと大きな利益を出せなくなっている。
逆に言えば乗り遅れた投資家が参戦するチャンスでもあるだろう。
前回高値は1900円あたり。ここを抜けられるかどうかが今後の投資判断のポイントとなりそうな気がする。もう一旦下げるのか、一気に超えてくるのかに注目したいと思う。
投資対象としてどうか
PERは32倍くらい(2019/12/9現在)。割安とは言えないが、近年急成長していることを踏まえると割高ではないと思う。押し目で買うのは十分にあり。
配当利回りは1%くらいだ。高配当投資が好きな方には微妙かもしれない。成長を期待する人が買うべきだろう。
ただ、過去の傾向や安定性をみると、減配リスクは低めだと思う。利益に比例して増配する傾向にもあるので、今後も成長すると読むのなら、配当目当てであっても購入の価値はある。