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新型コロナウイルスの蔓延をきっかけにテレワーク(在宅勤務)の普及が進むか

新型コロナウィルスが中国を中心に猛威を振るっており、死者は300人を超えた。まだまだ増えるだろう。

日経平均やダウ平均なども大きく揺さぶりをかけられており、本日2月3日、連休明け最初の取引となった中国株式市場も暴落、上海総合株価指数は8%近く下落した。

 

コロナウィルスに関してはネガティブな話題が多い(当たり前だが)。ポジティブな話題を無理やり探してみると、次のようなニュースを発見した。

テレワークで非常時に備え 企業で取り組み進む 新型肺炎契機(産経新聞)

記事から重要なところを抜き出すと、

  1. コロナウィルスの蔓延拡大により、危機管理の観点からの重要性の点でもテレワークが注目され、導入加速が見込まれる。
  2. いくつかの企業ではすでにテレワークの活用を強化に踏み出している。

ということらしい。

これまでにテレワークに期待されていたこと

①に関して、もともと人口減少による人手不足の解消法としてテレワークが注目されていた。家で子育てや介護をしながら労働に参加したり、身体的に通勤が困難な人でも仕事ができる、ということで労働人口の増加が可能になるとされている。それに加え、ダイバーシティの観点からも多様な人材を獲得しやすくなる効果も期待されている。

人手不足解消のほかにも、通勤時の混雑を解消する効果も期待できる。特に2020年は東京オリンピックが開催されるということで、開催期間中の混雑対策としても注目されている。そういうこともあって政府は2020年度までにテレワーク導入企業を12年度比で3倍にするという目標を掲げている。

ちなみに「オリンピックに合わせてテレワークの普及を促す」というやり方は、2012年のロンドンオリンピックの際にも行われた。この時にはロンドン市内の企業の約8割がテレワークを導入し、混雑が緩和した。この事例に倣おうというわけである。

危機管理の観点でも注目される

今回のコロナウィルスの蔓延がきっかけとなり、新たな観点でテレワークが期待されるようになるだろう、というのが記事の要点の一つである。

新型の病が流行ったときに、社員をうかつに出社させてしまうと、通勤時に病気をもらってしまったり、それを会社でほかの従業員にばらまいてしまう恐れがある。こうなると、企業の生産能力が著しく低下してしまうので、それを避けるために、自宅で仕事ができる環境があると、企業としても従業員としても安心である。

これが危機管理としてのテレワーク活用である。平常時はあまり活用できないとしても、緊急時にいつでもテレワークに移れる体制を整えておくことで、生産力の低下を最低限にすることができるかもしれない。

もともと危機管理の点に注目していた企業もある

総務省の調査によると、企業がテレワークを導入する動機については「生産性の向上」など以外に、「非常時(地震や新型インフルエンザ)の事業継続」との回答が約15%あった。

引用:テレワークで非常時に備え 企業で取り組み進む 新型肺炎契機(産経新聞)

いつの調査なのか、調査対象の企業がどうなっているのかわからないが、コロナウィルスの蔓延前で15%という事だと思う。危機管理として注目していた企業もそこそこあったようだ。そういった企業がすばやく緊急時にテレワーク活用に乗り出せたのだろう

元のデータを探してみたが、おそらく「平成30年通信利用動向調査の結果」という総務省の資料から持ってきたデータだと思う。参考までにそのデータを載せておく。

すぐに行動した企業の例

記事の中にもいくつか、すでにテレワークの活用を強化に踏み出している企業が紹介されている。

日本たばこ産業(JT)は1月27日付で国内全社員約7500人を対象に、テレワークを推奨する通知を出した。同社は平成29年からテレワークを導入しているが、今回、原則として週2日だった利用回数の上限を外した。担当者は「情勢の変化に合わせてしかるべき対応を行った」と話す。

IT企業のGMOインターネットグループも同日から中国人観光客が多い東京・渋谷、大阪、福岡の3拠点の従業員に2週間のテレワークを命じた。対象は約4千人で同社員の約9割。野村ホールディングスは1月15日以降に中国本土から帰国した社員は症状の有無に関係なく、中国出国日から14日間は在宅勤務としている。

人材派遣大手のパソナは派遣先などの契約企業が社員に在宅勤務を実施する場合、パソナからのスタッフにも適用させるよう順次、契約企業に要請する。

また、新型肺炎の感染者が増える事態になれば、少数精鋭の経営方針をとるベンチャー企業にとっては大問題になりかねない。音楽投稿・販売サイト「オーディオストック」運営のクレオフーガ(岡山市)は岡山本社と東京オフィス2拠点の全従業員に関して在宅勤務を実施。西尾周一郎社長は「個人の専門性が高く、誰が欠けても影響が出る」と危機感をあらわにする。

これらの企業たちがうまく「危機管理としてのテレワーク活用の成功事例」を作れれば、それに倣う企業も増えてくるだろう。頑張ってほしい。

今回のコロナウィルス蔓延を通じて、もともと15%だった「危機管理としてのテレワーク導入」がどこまで増えるのか、注目である。