目次
紹介論文
タイトル(日本語)と出典
『睡眠を促進する要因と妨害する要因の自己評価:フィンランドにおける疫学調査』
アブストラクトの訳
①この疫学調査の目的(N = 1600)は、フィンランドの都市に住む中年の人々が睡眠を促進または妨害すると認識している要因を説明することである。回答率は75%だった。
②その結果、睡眠の質は多くの要因によって決まることが示唆された。社会的および心理的要因、健康状態、睡眠時の環境、ライフスタイルおよび生活習慣。
③3人に1人の回答者は、運動が睡眠にプラスの影響を与えると感じていた。その次に重要なのは、音楽を読んだり聞いたりすることだった。さらに、サウナ、シャワーとバス、生活の安定、心理的要因、仕事での肯定的な経験、満足のいく性生活、静かな睡眠環境は、睡眠に良い影響を与えると報告されている。
④男性は、仕事に関連する圧力と疲労(20%)を、入眠または睡眠の質を妨げる最も重要な要因と考えた。女性のランキングでは、仕事の問題は3位であった。女性は、不安、対人関係の問題、および夫婦と家族の不和が睡眠の最も不安な要素であると報告しました(37%)。
⑤夕方のコーヒーは眠りに悪影響を及ぼす。「寝酒」は眠りに落ちるときのくつろぎを改善すると考えられていたが、男性はアルコールを4番目の阻害要因としてランク付けした。
⑥他の阻害要因は、ストレス、社会的出来事による不規則な日常生活、旅行、不規則な仮眠などである。また、食べすぎたり、夕方の運動が遅すぎたりすると、睡眠が妨げられることがわかった。一方で、一時的な運動不足は睡眠の質を損なうようであった。
⑦睡眠を妨げる外的要因として、被験者は騒音、光、高すぎる室温、きつい衣服、不慣れな睡眠環境、落ち着かない子供たちを挙げた。健康関連の症状も、特に女性や高齢化に伴い、不安要因として挙げられた。
⑧我々は睡眠の質を表す9項目の指標を用いて、調査対象を良い睡眠者と貧しい睡眠者に分類した。睡眠を最も促進する3つの要因は、良い睡眠者よりも貧しい睡眠者によってより頻繁に言及された。眠りが悪い人は、睡眠を促進する心理的要因(24%)を、眠りが良い人(9%)よりも有意に高い(P <0.01)と報告しました。貧しい睡眠者は、良い睡眠者よりも多くの不安要因を説明しました。
(※ブログ管理人のコメント)文章の先頭にある数字は、私が勝手に追加したものです。
ブログ管理人によるメモ
この論文は睡眠の質を左右する要因は何かを、アンケートによって調査したものである。「これをするとよく眠れるなぁ」「これがあると眠れなくなる」といったことを挙げてもらう自由回答方式のアンケート調査だ。古めの論文だが(1988年)、内容は現在でも通用するものだと思う。
「ストレス」が睡眠の大敵、マイナス要因はプラス要因を飲み込む
アブスト④~⑦に睡眠の阻害要因についていろいろ書かれているが、「ストレス」の原因となることについて並べられていることがわかる。つまり、睡眠の質を確保する上で最大の敵となるのはストレスであるといえるだろう。
また⑧によると、貧しい睡眠者について、睡眠のプラス要因が少ないわけではなく、マイナス要因が大きことが原因で睡眠の質が悪くなっているということらしい。これは睡眠の質を上げるハックを実行していくよりも、ストレス要因を排除したほうが効果的ということか。
ストレスを抱えているなら、それを減らす努力が必要となりそうだ。
「マイナス要因がプラス要因を飲み込む」という事実は良い勉強になった。
運動が効果的
アブスト③より、運動が一番多く挙げられているプラス要因である。運動をするとストレス健和に役立つと言われているので、納得。逆に運動不足がストレスを増やす側面もあると考えられるので、定期的な運動はマストだろう。
運動以外の要因も見ていくと、総じてリラックス要因が挙げられている。リラックスするとストレスを減らせるだけでなく、副交感神経が活性化して眠りにつきやすくなるため、寝る直前にやるのは良い。
プラス要因はストレスを和らげる効果があるのものばかりである。ストレスが質の悪い睡眠の原因なのだから当然か。しかし、現代はストレスにさらされる時間が長すぎて、これらのリラックスに充てる時間を十分に確保できないのが現実。ゆえに、プラス要因よりもマイナス要因が睡眠の質を左右するのだろう。
簡単にできる睡眠ハック
マイナス要因として挙げられている「夕方の運動やコーヒー」「寝酒」「きつい寝間着」「室温や光」といった要素は、ちょっと意識すればなんとかできるはず。
コーヒーは午後2時以降控える、寝る2時間前以降は激しい運動を控える、体にあったパジャマを着用する、寝るちょっと前から明かりを暗くしたり、スマホを封印する。これらは大体の睡眠本に書かれていること。できることからやっていく。
プラスを増やすよりマイナスを減らすほうが効果がありそうということで、こういったあたりを見直してみると効果的だと思う。
ストレスは目に見えないから面倒
ストレスが原因の不調はわかりにくい。目に見える実害が出るころには相当悪化している場合がある。光や音、空気などが原因のストレスはさらに気がつきにくいと思う。
この論文では述べられていないが、食事も気づかないうちにマイナスになっている場合がある。まあ、アンケート調査である以上、本人が気づかない場合は論文に登場しようがないんだけども。
テニスのジョコビッチはグルテンアレルギーで、グルテンフリーの食事を始めてから一気にトップの選手に躍り出た。ジョコビッチは長い間自分がグルテンアレルギーだということに気がついていなかったらしい。気が付かない間は、意識せずして体に負担をかけていた。
このように、アレルギーであると知らずに口にして、毎日知らぬうちに体に大きなストレスを抱えているという場合もある。食事に限らず、「これが原因」とわからぬまま体にダージを与え続けていることはあるかもしれない。
世間で「これがマイナスになっているかも」と騒がれているものに対しアンテナを立てて、そのたびにスルーせずに考えてみるべきなのだろうね。
まとめ
- 睡眠を阻害する大きな要因はストレス。これをいかに減らせるかが重要
- 睡眠の質を改善するのに運動が有効。ほかにもリラックスしてストレスが取り除けるような行為はだいたい有効
- 睡眠にいい要因を増やすよりも、睡眠に悪い要因を取り除くことが効果的だと考えられる