第一カッター興業は切断・穿孔工事事業がメインの会社で、「切る」「はつる」「洗う」「剥がす」「削る」をキーワードに、特化した技術を提供している企業です。この分野のリーディングカンパニーと言えるでしょう。
そんな第一カッター興業の業績データを10年分(2011年6月期~2020年6月期)集めて、グラフを用いて分析してみました。株価の分析も行いました。
なお、第一カッター工業は調査対象期間内に株式分割を行っていますが、EPSや配当金といった1株当たりのデータはすべて現在の基準に合わせてあります。
目次
業績の分析
売上高の推移(単位は[100万円])
2011.6 | 7,259 |
2012.6 | 8,072 |
2013.6 | 8,573 |
2014.6 | 9,794 |
2015.6 | 11,849 |
2016.6 | 12,857 |
2017.6 | 12,840 |
2018.6 | 16,283 |
2019.6 | 14,871 |
2020.6 | 17,440 |
売上高は右肩上がりでなかなかいいですね。2020年6月期は新型コロナウィルスの影響を受けているはずですが、それでもここ10年で最高の売り上げを記録しました。
この企業は建設業に分類される企業で、この業界は新型コロナウィルスの影響で工事が中止になったりしていましたが、第一カッター興業のメイン事業である切断・穿孔工事分野についてはそうでもなかったようです。
一部のセグメントで新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けたものの、当社グループの主力事業である切断・穿孔工事事業においては完成工事高が増加したため、当連結会計年度の当社グループ全体の売上高は17,440百万円(前年同期比17.3%増)となりました。
来期以降も影響がないかどうかに注意したいですね。
営業利益の推移(単位は[百万円])
2011.6 | 204 |
2012.6 | 481 |
2013.6 | 507 |
2014.6 | 932 |
2015.6 | 1,357 |
2016.6 | 1,733 |
2017.6 | 1,412 |
2018.6 | 2,187 |
2019.6 | 1,760 |
2020.6 | 2,296 |
営業利益も右肩上がりですね。最近は浮き沈みがありますが、それでも順調に伸ばしているほうだと思います。こちらも売上高と同様、新型コロナウィルスの影響がありながらも10年間で最高を記録しました。
完成工事高の増加に伴い、利益面に関しても、営業利益は2,296百万円(前年同期比30.5%増)、経常利益は2,482百万円(前年同期比34.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,523百万円(前年同期比21.8%増)となりました。
売上高営業利益率の推移(単位は[%])
2011.6 | 2.8 |
2012.6 | 6.0 |
2013.6 | 5.9 |
2014.6 | 9.5 |
2015.6 | 11.5 |
2016.6 | 13.5 |
2017.6 | 11.0 |
2018.6 | 13.4 |
2019.6 | 11.8 |
2020.6 | 13.2 |
2015年6月期以降は安定して10%以上を記録しており優秀です。2011年に東日本大震災があり、その影響で利益率が落ち込みましたが、無事回復していますね。
営業キャッシュフローの推移(単位は[百万円])
2011.6 | 213 |
2012.6 | 788 |
2013.6 | 107 |
2014.6 | 1,174 |
2015.6 | 977 |
2016.6 | 1,354 |
2017.6 | 913 |
2018.6 | 2,224 |
2019.6 | 1,231 |
2020.6 | 2,515 |
営業キャッシュフローに関してはかなりばらつきがあります
ね。2014年期以降は少なくても10億円前後のキャッシュを稼げるようになっています
営業キャッシュフローマージンの推移(単位は[%])
2011.6 | 2.9 |
2012.6 | 9.8 |
2013.6 | 1.2 |
2014.6 | 12.0 |
2015.6 | 8.2 |
2016.6 | 10.5 |
2017.6 | 7.1 |
2018.6 | 13.7 |
2019.6 | 8.3 |
2020.6 | 14.4 |
営業キャッシュフローマージン(営業CFM)は売上高の何パーセントの営業キャッシュフローを稼げているかの指標です。2011年期と2013年期は低いですが、それ以外の年は10%前後となっています。
ばらつきがありますが、ここ5年の平均が10.3%なので優秀なほうだと思います。
EPSの推移(単位は[円])
2011.6 | 21.4 |
2012.6 | 56.2 |
2013.6 | 60.1 |
2014.6 | 105.1 |
2015.6 | 144.6 |
2016.6 | 196.0 |
2017.6 | 174.0 |
2018.6 | 261.4 |
2019.6 | 219.8 |
2020.6 | 267.7 |
一株当たりの利益EPSも売上高や利益が右肩上がりで上昇するのに連れて順調に増加しています。いい傾向ですね。
BPSの推移(単位は[円])
2011.6 | 722.1 |
2012.6 | 778.4 |
2013.6 | 833.4 |
2014.6 | 933.5 |
2015.6 | 1,067.4 |
2016.6 | 1,253.0 |
2017.6 | 1,413.1 |
2018.6 | 1,659.4 |
2019.6 | 1,853.4 |
2020.6 | 2,104.7 |
BPSはとてもきれいな右肩上がり。複利的に伸びていていい感じですね。
ROEの推移(単位は[%])
2011.6 | 3.0 |
2012.6 | 7.5 |
2013.6 | 7.5 |
2014.6 | 11.9 |
2015.6 | 14.5 |
2016.6 | 16.9 |
2017.6 | 13.1 |
2018.6 | 17.0 |
2019.6 | 12.5 |
2020.6 | 13.5 |
ROEは2014年期以降は安定して10%を超えていてかなり優秀。10年平均で11.7%、5年平均で13.6%というのはいい値です。
安定したROEでBPSを積み上げつつ、ROEは高い値を維持し続けるという理想的な状態になっています。
配当金の推移(単位は[円])
2011.6 | 5 |
2012.6 | 5 |
2013.6 | 5 |
2014.6 | 10 |
2015.6 | 16 |
2016.6 | 12 |
2017.6 | 15 |
2018.6 | 25 |
2019.6 | 20 |
2020.6 | 25 |
配当金も業績の上昇に比例して基本的に右肩上がりです。業績次第では減配もしてくるタイプの企業であるということも分かります。
配当性向の推移(単位は[%])
2011.6 | 23.4 |
2012.6 | 8.9 |
2013.6 | 8.3 |
2014.6 | 9.5 |
2015.6 | 11.1 |
2016.6 | 6.1 |
2017.6 | 8.6 |
2018.6 | 9.6 |
2019.6 | 9.1 |
2020.6 | 9.3 |
配当性向は2011年期を除けば大体10%くらいで安定しています。おそらく、そういう配当方針なのでしょう。
10%という控えめな値については特に問題ないと思います。売り上げ、利益ともに右肩上がりで成長しているので、設備投資などにお金を使ったほうがいいと思うからです。決算資料にも「成長実現を軸に株価によるインカムゲインを志向」と書かれていますし、経営陣も同じことを考えているのでしょう。
それでも1%以上の配当利回りがあるので(2020年11月2日時点)、配当金もそこそこおいしいと思います。配当性向引き上げによる増配も狙えます。
10年チャートの分析
第一カッター興業のチャートは持ち合い期間が長いのが特徴ですが、それでも長い目で見れば右肩上がりの形となっています。業績が安定して優秀なので、落ち着いているタイミングで買っておけば利益を狙えそうです。ただ、チャートの特徴的に上がるまで時間がかかることは覚悟する必要がありあそうです。
第一カッター興業の分析:まとめ
第一カッター興業の業績と株価の推移について、10年分のデータを使って分析しました。
マイナーな企業ではありますが、切断・穿孔工事という分野でリーディングカンパニーの座を有しており、業績も優秀です。投資対象として検討するに値する優良銘柄の一つであると思います。