オープンデータの説明はどれか。
ア 営利・非営利の目的を問わず二次利用が可能という利用ルールが定められており,編集や加工をする上で機械判読に適し,原則無償で利用できる形で公開された官民データ
イ 行政事務の効率化・迅速化を目的に,国,地方自治体を相互に接続する行政専用のネットワークを通じて利用するアプリケーションシステム内に,安全に保管されたデータ
ウ コンビニエンスストアチェーンの売上データや運輸業者の運送量データなど,事業運営に役立つデータであり,提供元が提供先を限定して販売しているデータ
エ 商用のDBMSに代わりオープンソースのDBMSを用いて蓄積されている企業内の基幹業務データ
オープンデータの定義に関する問題です。
オープンデータとは何か
政府が平成29年5月に制定した『オープンデータ基本指針』では、次のようなオープンデータの定義が載っています。
国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、次のいずれの項目にも該当する形で公開されたデータをオープンデータと定義する。
- 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
- 機械判読に適したもの
- 無償で利用できるもの
要は「誰でも無料で使えるように公開されていて、コンピュータで処理しやすいデータ」のことです。
コンピュータで処理しやすい、というのは検索やら統計処理やらをしやすい状態にしておいてね、ということです。「書類をスキャンしてPDF化したデータ」などは中身を検索したり加工しにくいですから、こういうものはやめましょうねということです。
行政が保有するデータについては個人情報が含まれるものなどの例外を除いて、原則的にすべてオープンデータとして扱うことになっています。先程の『オープンデータ基本方針』によると、オープンデータ化することにより
- 国民参加・官民協働の推進を通じた諸課題の解決、経済活性化
- 行政の高度化・効率化
- 透明性・信頼の向上
を実現できるとのことです。もっと詳しいことを知りたい方は、直接基本方針にアクセスしてみてください。
問題の解説
この問題は先に説明したオープンデータの定義を理解していれば解けます。一つずつ選択肢を見ていきましょう。
アの解説
ア 営利・非営利の目的を問わず二次利用が可能という利用ルールが定められており,編集や加工をする上で機械判読に適し,原則無償で利用できる形で公開された官民データ
これが正解です。最初に解説したオープンデータの定義の要素3つの説明が一つずつ登場しています。
イの解説
イ 行政事務の効率化・迅速化を目的に,国,地方自治体を相互に接続する行政専用のネットワークを通じて利用するアプリケーションシステム内に,安全に保管されたデータ
「国,地方自治体を相互に接続する行政専用のネットワークを通じて利用する」という文言が、オープンデータの定義にある「国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できる」の部分と相反します。行政専用というの全然オープンではないですね。故にイは不正解。
ちなみに、「行政事務の効率化・迅速化を目的に,国,地方自治体を相互に接続する行政専用のネットワーク」というのは「総合行政ネットワーク(LGWAN)」の説明になっています。こちらに関する詳しい情報は地方公共団体情報システム機構により作成された『総合行政ネットワーク(LGWAN)の概要』というPDFを御覧ください。
ウの解説
ウ コンビニエンスストアチェーンの売上データや運輸業者の運送量データなど,事業運営に役立つデータであり,提供元が提供先を限定して販売しているデータ
「提供元が提供先を限定」というところが「国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用」というオープンデータの定義に反しますし、「販売している」というのも「無償で利用できるもの」というオープンデータの条件に反します。故にウは不正解。
選択肢ウは「限定提供データ」の説明となっております。
データ活用社会の活性化に伴い、自由に無料で利用できるオープンデータとは違い、貴重なデータを収集して利益を得ようとする義業者もでてきます。お金稼ぎは悪いことではなく、データで食える社会によって、より活発なデータ市場がうまれるわけです。
となると、コンビニの商品を盗めば犯罪なのと同様に、金になるデータを盗んでも犯罪になるべきです。このあたりの法整備が少しずつ進められています。
「限定利用データ」を定義することにより、限定利用データを不正に取得、使用、開示した場合に法的措置を行うことが可能となります。
選択肢の文章にあるような「事業運営に役立つデータ」は販売して利益を得ることが可能です。しかし、データは用意に複製することが可能であり、十分な利益を得る前に不正にデータを取得し複製されてしまうとデータの所有者・取得者が損をすることになります。
こういった不正行為を取り締まらなければ、データ取得や管理をするモチベーションが低くなってしまい、データ活用社会の実現が難しくなります。そこで、「限定利用データ」を定義し、、「限定提供データ」に係る不正取得、使用、開示行為を不正競争として位置づけることで、データ活用社会のための環境を整えたというわけです。
詳しいことは、経済産業省が作成した『限定提供データに関する指針』を御覧ください。
エの解説
DBMSとはデータベースのシステムのこと。これが無料かどうかはオープンデータとは関係ありません。ゆえにエは不正解。