基本情報

【基本情報 平成24年春期 午前問15】クラウドコンピューティングに関する問題の解説

クラウドコンピューティングの説明として,最も適切なものはどれか。

 

  あらゆる電化製品をインテリジェント化しネットワークに接続することによって,いつでもどこからでもそれらの機器の監視や操作ができるようになること

イ  数多くのPCの計算能力を集積することによって,スーパコンピュータと同程度の計算能力を発揮させること

  コンピュータの資源をネットワークを介して提供することによって,利用者がスケーラピリティやアベイラピリティの高いサービスを容易に受けられるようになること

  特定のサーバを介することなく,ネットワーク上のPC同士が対等の関係で相互に通信を行うこと

「そもそもクラウドって何?」という問題。

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クラウドコンピューティング(以下クラウド)とは、コンピュータによる処理をインターネットの向こう側にいるクラウド事業者のコンピュータに行わせるというサービスの事である。

NIST(米国国立標準技術研究所)によると、クラウドは次のように定義される。

クラウドコンピューティングは、共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きまたはサービスプロバイダとのやりとりで速やかに割当てられ提供されるものである。このクラウドモデルは 5 つの基本的な特徴と 3 つのサービスモデル、および 4 つの実装モデルによって構成される。

引用 – NIST によるクラウドコンピューティングの定義(IPA) 

クラウド事業者のコンピューティングリソース(ストレージやメモリなどのコンピュータの源)をユーザで共有し、ネットワーク経由でアクセスして利用するというのが、クラウドのシステムである。

したがって「コンピュータの資源をネットワークを介して提供することによって~」と書かれているウが正解である。

ウの文章に書かれているスケーラピリティというのは、システム規模の変化に応じたシステムの拡張をどれだけ柔軟に行えるかどうか、の度合いである。

クラウドの場合、課金をするだけでサービスをすぐに利用できるので、システム構築の手間と時間がかからない。そのため、システムの負荷が増えると想定されるときにササっとシステムを補強したり、負荷が小さくなったあとに補強したシステムを元に戻したりするのが容易である。これがクラウドのスケーラピリティの高さの所以である。

また、アベイラピリティというのは日本語で可用性という意味であり、システム障害に対する強さの事である。システム障害が発生しないほど、発生したとしてもすぐに復旧できるほど、可用性は高いと言える。「障害が発生していなくて、システムを用いることが可能(可用)である時間が長い」これが可用性の高いシステムである。

クラウド事業者は、本格的なデータセンターや高スキルの技術者などを保有しており、災害に強く、管理もしっかりしている。そのため、個人や普通の企業が管理するよりもずっと可用性は高くなる。

クラウドとは何か?クラウドを活用するメリットは何か?クラウドコンピューティング(以下クラウド)とは、コンピュータによる処理をインターネットの向こう側にいるクラウド事業者のコンピュータに行わ...

他の選択肢の説明

ウ以外の選択肢についても簡単に説明する。

ユビキタスコンピューティングの説明である。

ユビキタス(ubiquitous)とは、「同時に至るところに存在する」という意味であり、 ユビキタスコンピューティングとは、社会や生活の至る所にコンピュータが存在しており、 ユーザがコンピュータの使用を意識することなく、いつでもどこでも情報にアクセス できる環境のことをいいます。

引用 – ユビキタスコンピューティングとは(JPNIC)

 

ユビキタスコンピューティングの世界では、あらゆるモノにコンピューターが組み込まれ、コンピューター同士が協調動作する。コンピューターは、「見えないもの」として私たちに意識されることなく、ユーザーやユーザーの置かれている状況に応じて提供するサービスを変える。これにより私たちは高い利便性を得ることができる。

引用 – ユビキタスコンピューティング(大塚商会HP)

アの文章からユビキタスコンピューティングはあまりピンとこないかもしれない。「あらゆる電化製品をインテリジェント化しネットワークに接続」の部分がユビキタスの「いたるところに存在する」という意味に対応しているのだろう。

 

グリッドコンピューティングの説明である。

グリッドコンピューティングとは、ネットワークを介して多数のコンピュータを連携させ、全体として高性能な並列システムとして利用する方式。特に、インターネットなどを通じて広域的に、あるいは様々な機種のコンピュータを束ねて処理を分散する方式のこと。

引用 – グリッドコンピューティング(IT用語辞典)

グリッド(grid)とは、「格子」という意味。「魚を焼く時の網」という意味もあるので、そちらをイメージするとよいだろう。

要は網目のようにコンピュータ同士が繋がっているという事。並列処理によって高い性能を実現する。

グリッドコンピューティングのほかには、各所の電源を連結して効率のいい電力供給を目指すマイクログリッドなどにもグリッドという言葉は使われる。

 

ピアツーピアの説明である。P2Pと表記することもある。「ネットワーク上のPC同士が対等の関係で相互に通信」というところが重要。特に「対等な関係」というのがキーワードだ。