クラウドコンピューティング(以下クラウド)とは、コンピュータによる処理をインターネットの向こう側にいるクラウド事業者のコンピュータに行わせるというサービスの事である。
クラウド(cloud)とは、雲という意味の英語である。過去にコンピュータ機器のネットワークやインターネットを表す図として、雲のイラストを描いていたことが由来である。「雲の中身はよくわからないけど、接続してしまえばサービスを利用できる」という意味が込められている。ドラえもん四次元ポケットの中みたいな感じだろうか。
ちなみにクラウドソーシングやクラウドファンディングのクラウド(crowd)とは別物である。こちらは「群衆」という意味。
この記事では、
- NISTによるクラウドの定義
- クラウドを活用するメリット
等について解説する。
目次
NISTによるクラウドの定義
NIST(米国国立標準技術研究所)によるクラウドの定義は次の通りである。
クラウドコンピューティングは、共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きまたはサービスプロバイダとのやりとりで速やかに割当てられ提供されるものである。このクラウドモデルは 5 つの基本的な特徴と 3 つのサービスモデル、および 4 つの実装モデルによって構成される。
NISTは、クラウドの一般的な特徴を5つ挙げている
①オンデマンド・セルフサービス幅広いネットワークアクセス
(Broad network access)
オンデマンド・セルフサービス(On-demand self-service)
ユーザは、各サービスの提供者と直接やりとりすることなく、必要に応
じ、自動的に、サーバーの稼働時間やネットワークストレージのようなコ
ンピューティング能力を一方的に設定できる。
一度サービスを契約してしまえば、あとはクラウド事業者とのやりとりをする必要がない。自由に個別の管理画面などからサービスを利用することができる。
おかげ煩わしさがないし、気軽に利用できる。
②幅広いネットワークアクセス(Broad network access)
幅広いネットワークアクセス(Broad network access)
コンピューティング能力は、ネットワークを通じて利用可能で、標準的な仕組みで接続可能であり、そのことにより、様々なシンおよびシッククライアントプラットフォーム(例えばモバイルフォン、タブレット、ラップトップコンピュータ、ワークステーション)からの利用を可能とする。
標準的な端末とインターネット環境があれば、利用が可能。つまり、PC、スマートフォン、タブレット端末など様々なデバイスからサービスを利用できるしインターネット環境があればどこからでも利用できるという事。
この性質をうまく活用することで、テレワーク(出社せずに仕事をすること)なども可能になる。
③リソースの共用(Resource pooling)
リソースの共用(Resource pooling)
サービスの提供者のコンピューティングリソースは集積され、複数のユーザにマルチテナントモデルを利用して提供される。様々な物理的・仮想的リソースは、ユーザの需要に応じてダイナミックに割り当てられたり再割り当てされたりする。物理的な所在場所に制約されないという考え方で、ユーザは一般的に、提供されるリソースの正確な所在地を知ったりコントロールしたりできないが、場合によってはより抽象的なレベル(例:国、州、データセンタ)で特定可能である。リソースの例としては、ストレージ、処理能力、メモリ、およびネットワーク帯域が挙げられる。
事業者のコンピューティングリソース(ストレージ、メモリなど)を複数のユーザによって共有利用する形式をとる。
④スピーディな拡張性(Rapid elasticity)
スピーディな拡張性(Rapid elasticity)
コンピューティング能力は、伸縮自在に、場合によっては自動で割当ておよび提供が可能で、需要に応じて即座にスケールアウト/スケールインできる。ユーザにとっては、多くの場合、割当てのために利用可能な能力は無尽蔵で、いつでもどんな量でも調達可能のように見える。
必要に応じて、スケールアップ(処理能力を高める)とスケールダウン(処理能力を下げる)ができるので、柔軟性や経済性を得られる(後述)。
⑤サービスが計測可能であること(Measured Service)
サービスが計測可能であること(Measured Service)
クラウドシステムは、計測能力を利用して、サービスの種類(ストレージ、処理能力、帯域、実利用中のユーザアカウント数)に適した管理レベルでリソースの利用をコントロールし最適化する。リソースの利用状況はモニタされ、コントロールされ、報告される。それにより、サービスの利用結果がユーザにもサービス提供者にも明示できる。
利用した分だけ課金されるし、課金した分だけ利用できる。こういった従量課金が可能である。
クラウドサービスを活用するメリット
クラウドを活用することで、クラウドを活用しない場合と比べて、以下の4つのメリットを得られる。
- 経済性
- 柔軟性
- 可用性
- システム構築の高速化
ひとつずつ解説していく。
経済性
システムによっては、ピーク時とそれ以外でシステムの負荷に大きな差がある場合がある。クラウドを活用しない場合、ピーク時を想定してハードウェアやソフトウェアを購入する必要がある。そうなると、ピーク時以外は無駄が発生する。
「ピーク時だけシステムを増強したい」
そういった願いをクラウドは叶えてくれる。クラウドなら必要な時だけ課金額を増やしてシステムを増強し、ピークが過ぎたら課金額を元に戻すことが可能である。そのためリソースに無駄が生じず経済的である。
柔軟性
「クラウドによって、ピーク時だけシステムを増強する」というのは、経済的に無駄がないだけではなく、時間的にも無駄がない。
システムの増強・拡張にはスキルのある人材と時間が必要だが、クラウドの場合は課金額を増やすだけ。そのため、そのためシステムの増強・拡張をお手軽に行える。
可用性
「可用性{Availability)」とは、システム障害に対する強さの事である。システム障害が発生しないほど、発生したとしてもすぐに復旧できるほど、可用性は高いと言える。
クラウド事業者は、ガチガチのデータセンターと高スキルの技術者によって管理されており、災害には強いし、障害対策もバッチリ行われている。一部のスーパー大企業を除けば、自前でシステムを構築するよりも可用性を高くできるだろう。
ただし、絶対に大丈夫ではないため、丸投げで安心しきるのは危険である。
システム構築の高速化
システム構築に必要なソフトウェアやハードウェアについて、クラウド事業者側が用意しているものを利用すれば、設置やインストール作業を飛ばすことが可能。その分だけスピードアップが可能になる。
クラウドの種類
クラウドには、クラウド事業者がどこまで用意するのか、自前でどこまで用意する必要があるのかによって、4つの分類が可能である。
- SaaS ➡ ハードウェア、プラットフォーム、ソフトウェアのすべてをクラウド側が用意
- PaaS ➡ ハードウェアとプラットフォームはクラウド側が用意、ソフトウェアは自前で用意
- IaaS ➡ ハードウェアだけクラウド側が用意、プラットフォームとソフトウェアは自分で用意
- DaaS ➡ デスクトップ環境をクラウド側が用意
クラウドの種類についての詳しい説明は、次の記事を参考してほしい。
まとめ:クラウドの定義とメリット
NISTにクラウドの定義によると、クラウドには5つの特徴が存在する。
- オンデマンド・セルフサービス幅広いネットワークアクセス
- 幅広いネットワークアクセス
- リソースの共用
- スピーディな拡張性
- サービスが計測可能であること
これらの特徴から、クラウドには次のようなメリットがある。
- 経済性
- 柔軟性
- 可用性
- システム構築の高速化