クラウドサービスとは、サーバやソフトウェアなどを自前で用意しなくても、インターネットを経由してそれらを利用できるサービスの事である。
クラウドは「自前でどこまで用意するか」によって、SaaS(Software as a Servicer), PaaS(Platform as a Service), IaaS(Infrastructure as a Service)、DaaS(Desktop as a Service)の4つに分類することができる。
この記事ではクラウドの4つの分類について解説する。
SaaSとは
SaaS(サースと読む)は、Software as a Servicer の略である。直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」となる。ソフトウェアの機能をインターネット経由で提供する。
インフラ構築や保守運用、アプリケーションの実行環境の構築、アプリケーションの設置・導入やバージョン管理などすべてクラウド事業者側におまかせとなる。利用者は必要なソフトウェアを選択して利用するだけ。
サービスを契約して、アカウントを作るだけで、すぐにサービスを利用できるため、自分でソフトを購入して導入するよりも手間が少なくスピーディである。
バージョンアップもクラウド事業者側がやってくれるので、常に最新のものを利用できる。そのため、バグやセキュリティホールが放置される危険も少ない。データの保存やバックアップも勝手にやってくれるので、データを紛失するリスクも抑えられる。
またSaaSの場合、インターネットを経由して利用するため、外出先から利用したり、出社せずに自宅で仕事したり等が可能になる。働き方改革に際するリモートワークの普及のためにも重要な技術と言えよう。
ただし、インターネットが繋がらない場合にサービスを利用できないというデメリットがある。提供されたものをそのまま利用することしかできないので、カスタマイズ性がなく「かゆいところに手が届かない」といったことが起こる可能性がある。
SaaSの例
代表的なSaaSの例として、グーグルが提供するG suite や、マイクロソフトが提供するoffice365などがある。
G suiteは gmailやグーグルドライブ、グーグルカレンダー、グーグルドキュメントなどといった、グーグルの各サービスをまとめた事業者向けのアプリケーションパックの事である。
office365はWordやExcelといったofficeの各ソフトをクラウドで利用できるサービスである。新しいバージョンがリリースされたら、追加料金なしで即更新されるのは便利。
PaaSとは
PaaS(「パース」と読む)はPlatform as a Service の略で、直訳すると「サービスとしてのプラットフォーム」となる。アプリケーションの実行環境(プラットフォーム)をインターネット経由で提供する。例えば、
- OS
- データベースサーバ
- アプリケーションサーバ
- 開発フレームワーク
- プログラミング言語の動作環境
などである。
自分でアプリケーション開発環境を構築しようとすると大変手間と時間がかかるが、PaaSの場合、上記のような開発環境が最初から用意されている。そのため、インフラの構築や保守管理、運用といった事をする必要がなく、その分だけ短期間にアプリケーションを開発・提供することが可能になる。
SaaSとは違い、アプリケーションは自分で開発したものを利用するため、自由度は高い。ただし、プログラミング言語やデータベースなどは、事業者側が提供しているものしか利用でき兄。。また、特定のPaaSサービスに馴染みすぎると、ほかの環境への乗り移りが難しくなる。そのサービスが自分たちに合うのかどうかをしっかり検証する必要がある。
PaaSの代表的な例は、Google App Engine やAmazon Web Service、Microsoft Azure、OpenShift といったものがある。
IaaSとは
IaaS(「アイアース」と読む)は、Infrastructure as a Service の略であり、直訳すると「サービスとしてのインフラ」となる。クラウド事業者の保有するCPU・メモリ・ストレージ・ネットワークといったハードウェア資源をソフトウェア的に分割し、インターネット経由で提供する。基本的なサービスとしては、仮想サーバーの提供が挙げられる。
PaaSと違い、OSやソフトウェアなどは自分でインストールして管理する必要がある。手間はかかるし高度なスキルが求められるが、自由に選択できるためカスタマイズ性はとても高い。
サーバー購入の手間がかからず、必要な時にすぐサーバー作成や増築ができる。逆に要らなくなったときにすぐスケールダウンが可能である。そのため、キャンペーン中だけアクセスが増加するなど、負荷の増減がわかりやすいWebサイト用のサーバーやゲーム用のサーバーなどに利用される。
代表的なIaaSサービスには、Google Compute Engine やAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)などがある。
DaaSとは
DaaS(「ダーズと読む」)は、Desktop as a Service の略であり、コンピュータのデスクトップ環境をインターネット経由で提供するサービスのことである。コンピュータの操作はユーザ側の端末で行い、処理はクラウド側の端末で行う。データもクラウド側に保存される。
他のクラウド形態と同様、初期導入コストが安く済むほか、ウィルス感染に強いというメリットがある。手元にデータが保存されない点も、セキュリティ的に強い。
同じ構成のコンピュータを大量に使用する場合、まとめて管理・運用できるのもメリットである。
デメリットは、通信に対する負荷が大きくなり、遅延が発生しがちという点である。この点は5gの普及により解消されるかもしれない。
DaaSは提供形態によって、以下の3つの種類に分けることができる。
- プライベートクラウドDaaS
- バーチャルプライベートクラウドDaaS
- パブリッククラウドDaaS
プライベートクラウドDaaSは、クラウド上のデスクトップ環境は自分で用意するタイプのDaaSである。デスクトップ環境は自分で管理しているため、カスタマイズ性が高い。
バーチャルプライベートクラウドDaaSは、IaaSやPaaSの上に仮想デスクトップ環境を構築するタイプのDaaSである。クラウド側から提供される複数のユーザーとの共有部分と、自分で構築した専有部分を組み合わせており、専有部分についてはカスタマイズが可能。
パブリッククラウドDaaSは、クラウド事業者側がデスクトップの構成要素を決定しているタイプのDaaSである。カスタマイズ性はないがコストは抑えることができる。
クラウド種類 まとめ
クラウドサービスは、どこまでクラウド事業者から提供されるのか、どこから自前で用意しなければならないのかで4つに分類することができる。
- SaaSはアプリーケーションやソフトウェアが提供される。自前で用意するものはインターネットを利用できる環境(と利用料金)だけ
- PaaSはアプリケーションの開発環境(プラットフォーム)が提供される。ソフトウェアそのものは自分で開発して用意する。
- IaaSはハードウェア資源などのインフラが提供される。開発環境の構築から自分で行う必要がある。
- DaaSはデスクトップ環境が提供される。DaaSはさらに3種類に分類することができる。
「どこまでクラウド事業者から提供され、どこから自前で用意するのか」について表にまとめた。なお、DaaSについては種類があって簡単に分類できないので表からは除いてある。
「自前で用意」の部分が多いほど、カスタマイズ性は高くなる。