上場企業の「早期・希望退職」募集が急増 リストラ一服した2018年の3倍に!という記事を読んだ。
2019年の早期退職者・希望退職者の募集を行った企業数が、12社から36社へ増え、3倍となったとのこと。人数でも4,126人から11,351人へと約3倍になった。
この統計を発表している東京商工リサーチ(TSR)のページにアクセスしてみると、次のような図が載っていた。
このグラフを見ると、景気が良いときは希望・早期退職者の募集企業や人数が少なくなり、景気が悪いときには逆になっていることがわかる。
グラフの山となっている年を見てみると、2001年あたりはインターネットバブルが崩壊した時だし、2009年はリーマンショックの直後だ。その後、景気が回復するにつれて希望・早期退職者の募集企業や人数も落ち着いていっている。
そんなわけで、希望退職者募集が増えるということは、景気後退(リセッション)突入の兆し、と考えられるかもしれない。
2019年の日本経済を思い出してみると、中国経済の減速を受けた輸出の伸び悩みや、個人消費・民間需要の伸び悩みなどがあり、あまり調子は良くなかった。
これらは2020年以降もすぐに回復するとは思えず、いきなりバブルがはじける、とまではいかなくても、大した経済成長はできなさそう。成長の伸びが限界に達した状況といえる。近い将来リセッションに突入するだろう。
希望・早期退職者募集数の増加も、景気が天井圏にあることを示す状況証拠のひとつと言えるだろう。株を買っている人などは警戒しよう。
ただし、今回の希望・早期退職者募集には、新しい試みも見られているという。TSRによると、ただ退職者を出して人件費を削減する従来型の希望・早期退職者募集ではない場合もあるそうだ。
製造業では、データ解析やマーケティングなどの領域で不足する人材の確保を急ぐ。キリンHDでは、2019年10月から11月にかけ、営業に携わる社員やコーポレート関連の部署の社員を対象に退職者を募った。一方で、人数は非開示であるものの、退職した社員と同等の規模の中途採用者を新たに募るという。
また、足もとでは「セカンドキャリアの形成」、「社外組織での活躍」をテーマにした“先行型”も。集計外のみずほ証券では、福利厚生の一環として、希望退職者を2020年1月から3月にかけて募る。自ら希望する人を対象にし「対象年齢を設けてはいるが、応募者がゼロでも構わない」姿勢。応募後、半年以内に次のキャリアが決まらなかった場合、応募の撤回が可能だ。社内制度として今後も定期的に実施する方針という。
人員を削減して人件費を減らすということだけではなく、働き方改革や高水準の求人数を背景とした、雇用の流動化が目的という事もあるようだ。これはいいことだと思う。
今いる企業ではあまり役に立てない人でも、別のところに流してあげれば活躍できる可能性はある。余っている人材を放出して、そこから別の企業が必要な人材を引き抜く、という形が出来上がれば社会はもっと良くなるのではないだろうか。
結局は「余った人材を抱える余裕がなくなった」ということなのだろうが、うまくいけば景気後退のリスクを抑えられるかもしれない。他の企業も続けば、だが。