目次
計算機の必要性
人間の生活において「数を数える」という事は重要な行為である。これははるか昔からそうだった。
集団で狩りをして収穫物を数えてそれを分配したりする場合など、計算が必要になるシチュエーションは多かった。
計算機が発明される前は、指で数えたり、石を並べたりして数を数えていた。しかし、それだけでは足りない場面も出てくるため、「計算のための道具」に需要が発生する。
初期は手動だった
計算のため道具を使う流れが始まったのは、古代の中国からだ。算盤と呼ばれる道具が発明された。
算盤とは四角形の枠の中に棒と玉がはめ込んであり、玉の位置で数を表現して、計算を補助するための道具のことである。というとわかりにくいが、要はそろばんのことだ。
”そろばん”の概念そのものはアステカ起源説、アラブ起源説、バビロニア起源説、中国起源説などいろいろあるらしい。しかし、この見覚えのある形が確定されたのは古代中国である。”そろばん”は発明された古代中国をはじめ、古代ギリシャやローマの文明でも使用された。
私が小学生の頃、そろばんを習っていた友達が何人かいたが、現在も小学生の習い事として流行っているのだろうか。もしかしたら、自分よりも若い世代の人には全く馴染みがないものかもしれない。
この”そろばん”こそが我々が普段利用しているPCなどのコンピュータ(計算機)の起源である。
ただし、今のコンピュータのように自動で計算してくれるわけではない。この原始的なコンピュータは値を格納するだけで、計算自体は使用する人間が行う。いわばメモリだけのコンピュータだ。計算機と言うよりは計算補助機といったほうが良いかもしれない。
制御するための手順(アルゴリズム)は、使用する人間に格納されている。処理能力も人間依存だ。つまり、”そろばん”は人間というコンピュータのメモリ機能だけを拡張する道具であると言える。そろばん単体では何もできない。
自動化の時代
機械式計算機の登場
17世紀に入ると、もっと洗練された計算機を求める動きが発生した。その時に活用されたのは歯車の技術だ。
フランスのブレーズ・パスカルがPascaline(パスカリーヌ)という計算機を発明した。これが機械式計算機のはじまりと言える。
Pascalineはダイヤルを回すことで計算を行う仕組み。しかし加減算しかできなかったり、桁上りにうまく対応できなかったりと、まだまだ未熟な技術であった。
パスカルがPascalineを発明して以降、ライプニッツやバベッジといった人々が活躍し、歯車による機械式計算機は発展していった。
この頃の数学
17世紀前後のヨーロッパでは、数学という学問が爆発的に進化した。この頃には印刷技術が登場したため、数学の新しいアイデアなどもすぐに広まるようになり、批判・議論などの交流が活発化したことが大きい。
ガリレオ・ガリレイやヨハネス・ケプラーなどによる天体の研究が始まり、それに伴う解析幾何学の発展(フェルマー、デカルトらの活躍)、微積分の発明(ニュートン、ライプニッツらの活躍)など、応用数学が発展した。
このような応用数学に立ち向かうには”そろばん”では心もとない。格納できる値に限界があるし、難しい計算では処理速度・正確性の両方において物足りない。
そんな中で機械式計算機の需要が発生したのだろう。
機械式計算機のすごいところ
”そろばん”では値を格納するだけで、計算能力やアルゴリズムは人間依存であったが、機械式計算機の場合、人間がアホでも機械の使い方と値の入力さえ間違わなければ、同じ結果が得られるということだ。
計算が“手動”から”自動”に移転し、誰でも難しい計算を行うことできるようになった。
計算機の電子化
機械式計算機は複雑な歯車によって駆動される。そのため当時の技術では現実的な予算で生産することができなかった。
1900年代に入ると、電子工学が発展した。1940年代にはベル研究所のジョージ・スティビッツが電子機械式の計算機を発明したり、ハワード・エイケンとIBMの技術者によってMark Iという計算機が発明されたりした。
これらは電子的に制御された機械式リレーが多用されたものである。要するに電気で動くと言うだけで、中身は機械式計算機と似たようなものという事だ。
歯車を使用した機械式計算機とは違った理屈で動く電子計算機も同じ時期に開発された。これは真空管の技術を利用し、機械的な動作を一切含まない、完全な「電子的」な計算機である。
ジョン・アタナソフらによって開発されたアタナソフ・ベリー・コンピュータが有名である。これが電子的なコンピュータの起源である。
電子技術の発展によるコンピュータの一般化
1950年代中盤になると、集積回路の技術が発展を始める。ショックレーによるドランジスタの発明から始まり、トランジスタを敷き詰めた集積回路(IC)が発明された。
その後ムーアの法則に則ってトランジスタは小型化を続け、それに伴い集積回路が高性能・小型・安価になっていった。これによりどんどん一般人にも手が届くようになっていった。初期は一つの部屋くらいあったマシンは、片手で持てるスマホレベルにまでなった。性能も当時とは段違いだ。
この頃になると、機械式は電子式に歯が立たなくなっていき、衰退を始める。
デスクトップコンピュータの登場
コンピュータが一般人の広まる契機になったのは、デスクトップコンピュータの発明である。
スティーブ・ジョブズとステファン・ウォズニアックが市販用のコンピュータの制作を開始した。アップル・コンピュータ社を設立して、パーソナルコンピュータの製造販売を始めた。これがPC(パーソナルコンピュータ)の起源だ。
当時アップル・コンピュータ社のコンピュータはマイナーだった。やはりわけのわからん企業の開発したものを使いたくないというメンタルが、当時のビジネスマンには働いた。
そこで、当時の覇権であったIBMが1981年に「パーソナルコンピュータ」と呼ばれるデスクトップコンピュータを発表したら、瞬時にビジネスの世界で必需品としての地位を築く用になった。
ちなみに、このデスクトップコンピュータの基本ソフトウェアを開発したのは、マイクロソフトとかいう謎の無名企業(当時)であった。
どんどん一般市民にコンピュータが親しまれるようになる
その後もインターネットの発明、WWWというシステムの登場により、世界中のあらゆる情報にアクセスできるようになり、ビジネス用途やマニア用途以外の需要が発生する。
効率的に欲しい情報を集めるためのシステムであるサーチエンジンというソフトウェアもこの頃に発達した。
マシンは小型化を続け性能もどんどんアップ、価格も安くなり一般人でも手軽に活用できるようになっていった。デスクトップPCというジャンルのマシンも登場し取り扱いやすさが上昇した。
「マシンの一般化」という点で革命的だったのはスマートフォンの登場だ。当時普及率がとても高かった携帯電話が高性能なモバイルコンピュータに進化し、いつでもどこでもなんでもできる様になってしまった。携帯電話はほぼすべてがスマホに置き換わり、日本人のスマホ普及率は調査媒体によってバラツキはあるが、80%くらいにまで達している。
コンピュータが普及するにつれて、コンピュータが扱えないと現代社会の一員として半人前くらいの感覚になってきている。
またスマホの普及により誰でも政治に意見できるようになり、意見の集合体が大きくなれば政府を制御することだってできる。その結果経済にも影響を与えることもあるだろう。噂レベルでも拡散の仕方次第では企業の時価総額が1000億単位で下がることもある。
こうなってくると、情報活用に関する教育が大切になってくるだろう。
次は自律化の時代へ
これまでの流れはざっくりいうと
- 手動
- 自動化
- 一般化
という風に来ている。次は何が来るのだろうか?おそらく自律化の流れが来るくるだろう。
「コンピュータの自立化」とは「人間が命令しなくても勝手に必要な処理をしてくれるようになる」ということである。
IoTやビッグデータ処理の技術が発展して、ありとあらゆるところからデータをゲットし、それを処理することができるようになってきた。
これにAIの技術を組み合わせて、必要な処理を人間が指示しなかったり、指示する必要性に人間が気づいていなくても、コンピュータが勝手にやってくれるようになるだろう。
自動運転なんかは「コンピュータの自立化」の流れに乗った進化である。自動運転まで行かなくても、自動ブレーキなど一部分だけとればそれなりに実現しているところもある。自動ブレーキの場合、ブレーキを踏むべきところで踏み忘れても、車が勝手にブレーキを踏む判断をしてくれる。
今後の課題など
コンピュータの進化について書いてきたが、進化の速度には驚かされる。特に1950年くらいからの成長速度は凄まじい。
成長速度が速すぎて人間のほうが対応できていないところも出てきている。進化に怯えて「職がなくなる」ってなるのも、進化に合わせて新しい職を創造する速度が追いついていないのが原因だと思う。
法律の整備も追いついていない。進化の速度が早すぎて、法律を発行する頃には時代遅れな法律になっていたりもする。余計な法律を撤廃するのにも手間がかかりすぎて、規則に縛られている分野では最先端分野に周回遅れにされていたりもする。また、インターネットの発達によりひとつの国の法律ではどうにもできない事も多くなってきた。国同士の取り決めをする必要が出てくるが、規模が大きすぎて意思決定にも時間がかかる。
進化の速さに引きずり回されるのではなく、うまく乗っかる必要があるだろう。しかも一般人レベルで必要だ。そのために一般人レベルでできるのは、一生懸命勉強してついていくしかない。これができる人とできない人で格差は大きく広がることが予想される。
勉強していく中で最新技術を使いこなして富を生産し、より良い活用法を模索し、シェアしていくことが必要になる。