読書

【読書メモ・レビュー】『新しい就活』(佐藤裕)

読みました。メモや書評を残していきます。

この本に書かれている内容を私なりに分類すると、以下の3つに分けられます。

  1. 就職がゴールの就活(古い就活)ではなく、流れを大事にする就活(新しい就活)
  2. 「新しい就活」において、有利に進める方法
  3. これからの時代を生きていくための能力開発

 

すごい画期的なことが書いてあったわけではないですが、いろいろ考えることができたのでガンガン書いていきます。

古い就活と新しい就活

この本のタイトルは『新しい就活』とは、過去の自分のストーリーを整理し、将来のキャリアプランをイメージしながら行うものだと著者は言います。いうなれば「流れを大切にする就活」といったところでしょうか。

日本人の社会人の中に関する統計によると、就職活動を後悔している人は40%近くいるとのことです。また、働くことを楽しめている人はわずか6%しかいないと言います。これは世界で139番中132位だそうです。

はたらくことを楽しめている人の割合は、アメリカが32%で世界一だそうです。うらやましいですね。

なんでこんなことになっているのかというと、内定をゴールとした即席の情報収集やテクニック磨きに原因があると著者は分析しています。

確かに大学3年生くらいになってからいきなり就職活動を始めるパターンがほとんどでしょう。その場合、就職活動の期間は1年程度になりますね。この期間で急速に情報を集めテクを磨き、面接やらに飛び込んでいくわけです。

しかし意外と時間がないので、情報収集を急速化させるなかで、新しく得た情報に影響されすぎて「偽りの興味関心」が出てしまう可能性があります。就活ランキングとかに影響されてしまったりとか、いい情報に無批判的に飛びついてしまうような事が発生しがち。いわゆる「ノリで就職先を選ぶ」みたいな感じでしょうか。この本では次のように述べられています。

 現に、私が指導してきた多くの就活性が陥る罠があります。
それは、いざ就活を始めようと情報収集したり、先輩に就活の事をヒアリングしたりして作り上げられた「即時の興味関心」によって、受ける企業や業界を絞り込んでしまうことです。

私の場合は大学院入試で似たような経験があります。研究室選びを「ノリ」でやってしまい失敗しました。大学院はそんなにぬるく無いので、本当に興味がないと2年だけとはいえやっていけないんですよね。それでダラダラと2年間を過ごしてしまう人もいます。私の場合は中退してしまったわけですが。

就活性にもこれまでに20年くらい積み上げてきたものがあるので、それを無視して即席の興味を元に次の活動場所を選んだら失敗する確率が高いのは当然ですね。

また、人によっては世間体を気にしてしまう場合もありますね。

こうしたミスマッチを防ぐために、自分の過去を整理してストーリーを作ることが大事だと著者はいいます。これまでの流れを理解する、という事ですね。そして、その流れに乗れば就活はうまくいくというわけです。

20年間積み重ねてきた流れに逆らうのは大変です。ものすごいエネルギーがないとうまくいかないでしょう。一方で乗るだけなら

私は「新しい就活」とは「流れに乗る就活」であると理解しました。これまでの人生の流れを理解してそれに乗る。そうすれば、面接などでも付け焼刃の準備でオドオドにならないのでスムーズに内定までいけそうですね。

流れを作る

本物の興味関心や好奇心を積み重ねていくことが大事だと著者はいいます。これは流れに乗る前に流れを作ることに該当すると思います。

 極論を言えば、こうした「おもしろい」「もっと知りたい」といった興味や好奇心を積み重ねていくと、就活の準備がいらなくなる。
なぜなら、そこに到達した就活性というのは、すでにいろいろな情報を組み合わせられるようになり、自然と有益な情報が入ってくるアンテナを持つことができたり、コミュニケーション能力もアップしたりしているからです。

新しい就活は流れに乗ることが重要ですが、流れがそもそも存在しなければやりようがないわけです。まだ時間的に余裕があるうちに興味のある事を全力でやって流れを作っておきたいものですね。そうすれば流れに乗るだけでよいので著者が言うように就活の準備がいらなくなるのでしょう。事前にできるだけ流れをを大きくしてしておいて、大事な時にビッグウェーブに乗れるようにしたいものです。

これは就活性以外にも言えるでしょうね。就活はゴールではなく、人生の流れの一つなので、その後も流れを大きくしながら流れに乗っていくことで、いい人生を送れることでしょう。近年は人材の流動性が激しいですし、この傾向はこれから顕著になっていくでしょうから、波を大きくする努力は常にしておきたいですね。そのため、常に自分の興味関心に敏感になって全力で人生を楽しんで行きたいものです。

流れを理解する

興味のある事に対し全力でやっていけば流れはできるということでした。本当に全力で精力的に活動してきた人なら自分の流れは完全にわかっていると思いますが、そうでない人もいると思います。そこで、流れを理解するための自己分析の方法についても紹介されています。

それは、とにかくやったことを可視化するということです。何でもいいから箇条書き的に過去の出来事を書き出していくという方法が紹介されています。後から分類を行うので付箋に書き出すと便利でしょう。

書き出したら、それらを「成功体験か失敗体験か」「自分で決断したのか誰かにやらされた、影響されたのか」で分類します。下の図のようなグラフを作って、どの分類の属するかで付箋を置いていくといいのではないでしょうか。こうやって可視化することで、自分の傾向がよく見えてくるとのことです。

成功体験と失敗体験を書き出すのはよくあると思いますが、その行為をやる決断を誰がしたのか、という軸を追加するというのはいいアイデアだと思いました。これにより、自分の性格とか、興味とかがより鮮明に見えてきます。人生をよくするための自己分析という意味では効果的ですね。

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未来の事も考える

人生は流れ続ける、就活でゴールではない。したがって、過去から未来へうまく流れるような行動をとっていく必要があります。ですから、未来のことも考えなければなりませんね。

この本では2050年の自分を想像してみよう、と提案しています。

2050年というと30年後ですね。そんな未来のことを明確に想像することはできません。しかし、30年後を想像するためには1年後、3年後、5年後、10年後… というように近い未来から想像を組み立てていくことになるので、自身のキャリアプランを考えるのに役立つと思います。

「30年後はふんわりとしか想像できないけど5年後ならそこそこ想像できる、だったら今やるべきことはこうだな」こういった未来から逆算する思考がモチベーションに繋がり、志望動機のクオリティも高める事でしょう。入社後のイメージが明確であるほど、入社後のための準備も進められますしいいことだらけ。未来も含めて流れを理解している就活性は企業側の評価も高いはずです。

本の中で、「どんな人が御社のお客様ですか?」と客層に関する質問をすると会社のリアルを知れて損はないと書かれていますが、これは未来志向をアピールする上で効果があるのではないかと思います。客層によって勉強しておいたほうがいい時事などもわかるので役立つでしょう。「では○○を勉強しておけば仕事がスムーズになりそうですね」などと返しておくと面接テク的にいいのかもしれません。

他には「入社までに勉強しておくといいことは何でしょうか」「入社直後に苦労されたことはなんですか」とかも、役に立つことが聞けそうだと思います。

ちなみに私は将来的にセキュリティが重要技術になると思います。今でも国はセキュリティ人材の育成を急いでいますが、この意識は間違っていないでしょう。

IoTやAI、自動運転など、今後はITがこれまで以上に日常生活に紛れ込む世界になっていくはずです。というよりも日本や各国がそういう世界を目指しています。こういった世界を実現する上で障壁になるのはセキュリティ的な課題です。

セキュリティ的なやらかしが多いことが、IT技術への不安につながっていると私は分析しています。たとえばペイペイやセブンペイのようなやらかしがあった事で、スマホ決済は一切利用しないという人がいるはずです。実際スマホ決済を利用しない人の利用しない理由はセキュリティの不安だそうです(参考ページ)。

キャッシュレス決済に限らず多くのIT技術について同様の傾向があるはず。日本がIT先進国を目指すうえではセキュリティ強化が欠かせないのです。なので大学でセキュリティの勉強を楽しくできていた流れも踏まえ、私はセキュリティに強いエンジニアを目指したいと考えています。日本の発展につながるはずです。

未来が分からないからこと自己研鑽が大事

遠い未来にどうなっているかはわからないですが、それは移り変わりが速いためです。

30年後を想像しても、おそらくその通りに事は進まないので、早い流れについていく能力が必要です。

公務員や大企業など、安定していると言われている所でも人材の流動化は進んでいくはずです。こういう時代ではひとつの場所に安定しようとすることが一番不安定となります。

一番安定な働き方について、著者は次のように述べています。

なぜ、私は安定した働き方ができていると申し上げたのか。きっと、多くの人が気になるところではないでしょうか。今の時代で安定したければ、自分にしかできない何か特別な才能や能力が必要になってくるのです。

(中略)

 その実績が認められてなのか、私のもとには常にヘッドハンティングの話が舞い込んできます。
「今の給料よりもっとあげるからうちで働かない?」
これが、私のいう安定した働き方です。
このような事を言われるためには、何かしらの力を持つこと。力というのはその人が持っている市場価値ともいえます。なぜなら、その人に価値があるならば、必ず買いたいという人が世の中にいるからです。

入社してもそこでゴールとならず、自己研鑽を積んで市場価値のある人間を目指すべきだということですね。流れを理解したうえでどの分野での市場価値を狙うかも重要となりそうです。

私はセキュリティに強くなりたいと言っていましたが、セキュリティ人材はまだ揃っていないですし、人材が増える速度よりも需要のほうが伸びている状態なので、ここに強みを持つことで安定にもつながるはずです。そういった狙いもあります。

感想など

いろいろ考えることができて、いい本でした。

内容自体はそんなに革新的なことは書かれていなくて、どこかでいわれているようなことを角度を変えて語る、みたいな感じではありますが、「就活は流れ」「人生は流れ」というイメージを鮮明にできたという点で、私にとってはいい出会いでした。

「新しい情報が知りたい!」という方にはガッカリされるのかもしれませんが、世の中新しいことだらけのすごいおいしい本なんて中々ないです。内容は同じことでも、語り口が変わるだけで違う発見や理解が得られるものです。私はそういったものが一つでも得られればいいと思っているので、この本は十分にアタリです。

以下自分用のメモを雑に殴り書き。

自分用メモ

  • 学生時代の貴重な体験
  • 人が捨てたものを拾え
  • 中学生をプロの練習に参加させることについて
  • ハーバード大生の教養

学生時代の貴重な体験

「あなたが学生時代にできた貴重な体験はなんですか」という質問が載っていたので自分の答えを考える。面接用ではないので自分の言葉で書く。

学生時代は平凡だったな。何となく生きてきたね。そのせいで大学院中退の憂き目に合うわけだが。しかし、この失敗体験は貴重と言えば貴重。ブログを書いてアウトプットの習慣をつける事にもつながったし、興味を分析してある程度は目指すべき道ができた。本書でもあるように、ミスマッチが原因で社会人になった後につらい思いをしている人がいることを考えれば、結果的に悪くなかったといえる日が来る可能性は高い。ニートタイムも有効に活用できれば悪くないと思う。

本書の最後のほうに以下のような記述がある。

浪人生が就活を優位に進めるためのアドバイスとしては、浪人した明確な理由や、浪人経験を通して何を得られたのかといったポジティブな材料をしっかりと面接官にアピールするという事があります。

「浪人生」を他のネガティブワードに置き換えてもなりたつ話。既卒の人も多めの自由時間を有効活用していい材料を揃えたいね。

人が捨てたものを拾え

人が要らないからと捨てたものを拾って、自分なりの活用法を考えるのは創造力のトレーニングになるとのこと。

なんとなく「野村再生工場」を思い出す。もう一回野村ノート読み返そうかな。使い捨てを生かす術に関して野村さんはうまかった。いま読み返せばいいアイデアが浮かぶかもね。

高校生をプロ野球の練習に参加させることについて

「2ランク上の世界に身を置き、自己認知を高める」という項において、「実力のある中学生野球部員に、天狗にならないようにプロや大学生の練習に参加させればよい」にみたいなことが書かれているけど、大学はともかくプロと中学生の練習なんてできるのだろうか。プロアマ規定的に難しそう。入団テストに参加くらいならできそうだが、入る気がない奴をテストする球団はないだろうな。

あた、2ランク上のレベルで打ちのめされれば天狗にならないとあるが、本当にそうかな。「俺は中学生だし、そりゃこうなるわな」としか思わない気もする。普段のコミュニティで無双する限りは天狗になるやつはいつまでも天狗になるだろう。結局は人による。石井一久みたいに「プロも大したことないな、今は無理でも成長すれば余裕だな」になるかもしれん。

それに、野球やっている奴ならプロ野球の試合を生観戦するだけでレベルの違いはわかるだろうと思う。それでだめなら練習に参加させても変わらなさそう。入団して実際に試合にでれば打ちのめされるかもだがそれは無理だしな。

ハーバード大生の教養

著者はハーバード大で特別講師をやったことがあるらしい。すごいね。

そこで著者が感じたのは、ハーバード大の学生が生きた教養を持っているという事。これがその後のキャリアにも生きているのだそう。

ハーバード大学生は自国アメリカの事をよく理解ていて、キャリアプラン構築に役立っている、いろいろな選択肢を常に頭に入れることができる、だそう。

国の流れと自分の人生の流れを重ね合わせながら、どういう風に流れに乗っていくか、未来はどうなるかを考えているからこその、卒業後の活躍があるのだろうね。

就活では何がしたいかよりも何ができるかが重要

何をしたいか言うのは簡単。自分が持っているものをよく理解し、会社の利益にどう役に立つのかを語る必要がある。そのためには自己分析と企業分析の両方が大事になるだろう

その場しのぎ力

用意したこと以外うまくできないのは面接でもマイナス。その場しのぎで乗り越え必要のある場面は人生の中でいくらでもあり、仕事をするうえでも重要。面接でもそこは試される。

この力に自信をもてれば、考えすぎて動けなくなる時に「とりあえずでやってみて出たとこ勝負で何とかしよう」という決断が可能になるはず。

私はゲームでも計画ガチガチに立てることが多いが、たまには適当やってその場しのぎ力鍛えるか。

計画を立てる段階で頭を悩ませすぎるのは良くないね。少しでも前に進めばさらに先の未来もより鮮明に見えてくる。そうしたら計画を改良すればよい。自分はこういうところが苦手だから意識していきたいね。

知識は役に立つものではなく役に立たせるもの

これは本の中に出てきたフレーズではなく、読んでいて私の頭に浮かんできたフレーズ。何でかはわからん。

これもその場しのぎ力に通じるものがあるかな。役に立たせるために知識を得るのもいいが、たまたま得た知識を活用できるときにとっさに活用する、または強引に使って見せる。これができると強いだろうな。