読書

【書評】佐藤優『読書の技法』超速読、速読、熟読の3つの方法を使い分ける

読書の技法

これの本を初めて読了したのは随分前のことだ。しかし、図書館で再び見かけ、なんとなく書評書きたくなったので、借りて再読してみた。

この本に書いてある読書術やノート術は大だいぶ参考にさせてもらった。最近の本ではないが、まだまだ通用する。この記事を読んで下さる方も、この本を読んでそういった技術を磨きたくなるような書評ができれば良いのだが...

著者の昔話

第1章の内容は、著者の昔話がほとんどだ。

著者が本格的に本を読み始めたという中学時代から、速読の技術を確立するモスクワ赴任時代までの読書遍歴について書いてある。

個人的にはこういうのにあまり興味はないのだが、有名人がどんな本を読んでいるのか知るのが好き、という人もいると思う。そんな人が読んでみると面白いかもしれない。著者は哲学書とかの小難しい本を読んできたようだ。

アレキサンドル・カザコフ(サーシャ)とセルゲイ・アルチューノフの圧倒的な読書量をみて、基礎知識の重要性を学んだ話が個人的には印象的だ。少し文章を引用してみる。

筆者が、サーシャやアルチューノフ先生の膨大な読書量から学んだのは、その見た目の読書量ではない。そうではなく、その根底にある基礎知識と強靭な思考力と、それを身につけるための熟読法である。
上辺の読書量だけを真似してもまったく意味がなく、また真似することもできない。基礎知識があるからこそ、該当分野の本を大量に読みこなすことが出来るのだ。

いぜん、ある記事で「読書スピードのボトルネックは目を動かすスピードではなく、脳の理解速度である」と述べたことがある。

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基礎知識が大量に頭の中に詰まっていないと、読書スピードが遅く、大量に本を読みこなすことができない。そのようにこの本でも言っている。

読書スピードを上げ、読書量を増やすには、基礎知識を増やすしかない。この本によると、基礎知識を増やすには関連書を熟読するしかないという。

本の選び方

熟読をする前に、速読をすることが重要だと著者は言う。

基礎知識は熟読によってしか身につけることはできない。しかし、熟読できる本の数は限られている。そのため、熟読する本を絞り込む、時間を確保するための本の精査として、速読が必要になるのである。

世の中には星の数ほどの本が存在する。玉石混交であるたくさんの本の中から熟読するべき本を選択するために速読の技術が必要になる。

速読は「いい本を選び抜く」というよりは「読む必要のない本を切り捨てる」ために行う。頑張って一日一冊の本を読んだとして、一年で360冊。50年で18,000冊読むことが出来る。これくらいが人生で読める本の数の限界だと思う。

18,000冊と言うとめちゃくちゃ本を読んでいる感じがするが、世界に存在する本の、ほんの一部にすぎない(ダジャレではない)。総務省の統計によると、日本で販売される本の数は1年間で7万冊~8万冊くらいだ。これをすべて読もうと思うと100年くらいかかる計算になる。

毎年これだけの数の本が出版されるのだ。人生で読む事のできない本のほうが圧倒的に多いことが分かる。こんな状況の中で、的確に熟読するべき本を選ぶために、速読の技術を磨く必要があるのだ。

そこで、本を選ぶためのテクニックがいくつか紹介されている。

  • 書店員の知識を活用する
  • 本を選ぶ数は奇数にする
  • 見えを張っていきなり難しい知識をつけようと欲張らない

などが紹介されている。詳しく知りたい人は、この本を購入しよう。

ちなみに私も過去に本の選び方に関する記事を書いた。さっき紹介したものと同じ記事なのだが、リンクを載せておく。

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テクニックを使ってある程度あたりをつけたら、速読をしてさらに絞り込みをかけていく。

読むべき本を厳選するための速読の技術

「速読」といっても、「読む」必要は無く、眺めるだけでいいとのこと。

このとき文字を読まない。とにかくページ全体を見るのだ。

「タイトルだけ見て買う」とかではなく、中身もちゃんと見ようね。そういった主張である。

なんとなくページ全体を眺めるだけでも「なんか難しそう」「見にくい」などといった事は分かるものだ。実際に中身を見ることで、本の購入に関する失敗は少なくなる。

最近はAmazonなどのネット通販が発達して、本の中身を見ないで購入することが増えた。自分がよく知っている分野のビジネス書とかなら、これでもあまり失敗はしない。「内容はハズレだったな」と思うことはあっても、「難しくて読めない」ということはない。

しかし、自分があまり知らない分野、特に学術書や専門書だと、中身を見てみないで購入した場合、読みにくくてそもそも最後まで読みきれないなんてこともある。

だからこれらの本の場合、実際に書店に行って本の中身を確認することが大切だ。読みやすいかどうかは、ぱっと見でもだいたい分かる。

個人的には大学の図書館にいくのもオススメだ。一般の書店だと品揃えが薄い専門書がたくさんあって、たくさんの選択肢の中から使用する専門書を選ぶことが出来る。

「これがいい!」というものに出会えたら、ネットで購入する。こういう事ができるので、ネット書店は便利だ。ちなみに私は楽天ブックスが好き。

この本では、筆者が実際に速読を行う事例を交えて説明されている。いわば実況プレイみたいなもの。7冊の本を実際に超速読している。いろいろと参考になる。

他にも、浅い理解を素早く得るための「普通の速読」という手法も紹介されている。こっちは、ほかの読書術本と代わり映えしない内容かなと思う。ただ、筆者の実況プレイが見れるのでそこはオススメ。ほかの読書術の本を読んでいる方で、「やり方は分かっているけどうまく行かないなぁ」と思っているなら読んでみると良いかも。

熟読の技術

この本で紹介されている熟読法は、一つの本を3回読む方法だ。

  • 1回目 ➔ 線を引きながら読む
  • 2回目 ➔ ノートに抜書をしながら線を引いたところを中心に読む
  • 3回目 ➔ もう一度最初から最後まで通読する

一度の通読では満足せず、何回も読むタイプの読書術は多い。複数回読むことで必要な情報を絞るための感性が磨かれるていくのだろう。

この方法は、深い理解を得るための方法だ。「なんとなく流れがわかればいい」というものではない。深く掘り下げた勉強をしたいという方にはオススメだと思う。細かい作法などについては本を買って読んでほしい。

「これは!」と思った抜書を残しておくと、ブログを書く時にも便利である。引用は自身の主張を強化するのに有効だからで、使えそうな文章をストックしておくと再利用しやすい。抜書の横に、抜書きした当時思ったことをメモしておくと、後で活用する際に自在に言葉を振り回せるようになるのでさらに便利。

線を引くかどうかで悩んだ時に「迷ったら引け派」と「迷ったら引くな派」の指導をする読書術本に分かれるが、この本は「迷ったら引け派」である。私もそう思う。

線を引く作業は、一冊の本の中で「重要な記述」と「重要でない記述」を分別する作業である。とりあえず「重要そうだなぁ」と思ったら線を引いておけばいい。

「線を引きすぎた!」と思ったら、線を引いたところだけを拾いながら読んでいき、「やっぱ重要ではなかったわ」というところの線を消していけばいい。

この作業は線を引いたところしか読まないのであまり時間はかからない。相手にする文章量が少ないので、消すか消さないかの判断も楽になる。一つ一つの文章に対して、より丁寧に判断する思考の余裕が生まれる。

本を選ぶ際のにも速読で読む本を選抜したが、一冊の本についても必要な文章とそうでない文章を選抜する。選抜したものをノートに書き写す。そうすることで質のいい文章だけを手元に置くことが出来る。

手間を書けていい文章を選抜し、それをノートに移してストックする作業を通じて、本位書いてある内容について深い理解を得られる。厳選した文章のストックは今後の人生において役に立つものとなる。

速読法、熟読法以外の内容

読書ノートの作り方

熟読法のステップの中に「抜書をする」というものがあったが、そこについて掘り下げて説明している章がある。

ただ書き写すだけではなく、書き写した文章に対するコメントも書く方法が載っている。コメントを書く訓練をすることで、自分の考えや意見をひねり出せるようになる。コメントで何を書くか悩むことが理解につながるし、訓練することで理解するための思考回路が築かれるのだと思う。

  • 具体的なコメントの書き方
  • 参考になる本
  • 著者による抜書とコメントの例

なども書いてある。

高校の参考書活用法

「受験勉強が現実の社会生活の役に立たない」という認識は間違っている。社会人が大学受験のレベルで必要とされる知識を消化できていないため、記憶に定着していないことが問題なのであって、受験勉強の内容は、いずれも社会人になってから役に立つものだ。

筆者は高校レベルの知識の重要性を強調している。高校レベルの5教科の知識がしっかりしていれば、本の知識を身につけるための土台としては十分。しかし、この土台がしっかりしていない人はとても多い。

そういった背景の中、「高校の教科書や参考書を使いこなす方法」について100ページくらい割いて説明している。各科目それぞれについて、オススメの参考書と、それを活用した勉強法について述べられている。

高校の参考書を活用しようという考え方は、私も賛同する。高校の参考書は非常に優秀で分かりやすいものが多い。競争が激しい分野であり、各出版社は分かりやすい参考書の作成のために努力している。大学受験を終えてからも、活用しない手はない

大学の教科書などは、こういった競争にさらされていない分野が多く、基礎知識がないと全然理解できず、前に進めない事が多い。こういった難しい本を読む前に、優秀な高校学参を活用して基礎体力をつけるのは有効な手段だと思う。

小説や漫画の読み方

こういった娯楽のための本であっても、知的な活用をできないことはない。そこで著者による読み方の解説が載っている。

こちらも他の解説と同様、実況プレイが豊富だ。漫画の内容と社会問題を比較する思考が面白い。

本はいつ、どこで読むか

時間や場所別の読書法について述べられている。また時間を捻出するための短時間睡眠についてや、隙間時間の活用法についてなども書いてある。

「短時間睡眠のコツは二度寝をしないこと」というのは参考になった。たしかに、少しだけ辛いのをガマンして一度でスパッと起きてしまえば、無駄な時間が減る。個人的には二度寝しないほうが起きた後の体調がいいので、この本で二度寝をやめるキッカケをつかめたのは良かった。

ただし「15分 + 30~40分 + 3時間」睡眠法については全然真似できそうに無かった。これは3時間睡眠が基本で、眠くなったら15分の仮眠と30~40分の仮眠を一回ずつ取るというもの。睡眠法については人によって適正が違うので、ムリに真似をしてはいけない。著者も次のように言っている。

ただし、睡眠時間は個人差が大きい。睡眠法は、「自分の体質に合わせて、必要で十分なな時間をとる」という以外の方策がない。

その他に私が注目した所

重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。そうでなくては、本物の知識が身についたとは言えない。

「一問一答形式で答えられる」だけでは不足で、得た知識と既に自分の中にある知識を融合させないとダメということか。

知識の融合を繰り返しているうちに、現実の出来事について説明したり、未来を予想できるようになる。この場合、知識量は芋づる式に増える。

一問一答形式の暗記の場合、直線的にしか知識が増えず、現実に対応できないだろう。どんどん知識をつなげて、複利的に知識を増やしたい。

速読において時間をロスする最も大きな要因は、内容に引っかかってしまい、同じ行を何回も読み直すことだ。
これを直す技法がある。定規を当てながら速読するのだ。そうすると、同じ行を重複して読むことを避けることができる。

定規を当てる方法は私も実践しているが、なかなか便利。専門書の場合、一行が細長い物が多く、目線をうまく動かせなくてイライラする事がある。そこでこの方法を使うと、そういったイライラがなくなり、読書スピードも上がる。

定規は透けないものが良いだろう。透明な定規だと目線が安定しにくい。

終わりに

この本は読書法について書かれた本である。他の読書術本に比べて、めちゃくちゃ新しい事が書いてあるわけではないが、一つ一つのテクニックに文章量を割き、丁寧に解説しているのがいい。

読書術本をあまり読まない人だけではなく、他の読書術本を何冊か読んできた人にもおすすめできる。新しいテクニックはないかもしれないが、自分の持っている読書術を一歩前に進めるのに役立つだろう。