日本航空(JAL)は国内線、国際線の両方で国内2位の大手航空会社です(共に1位はANA)。ANAと並んで「航空大手2社」と呼ばれたりします。
最近では新型コロナウィルスの影響もあって大きく利益を落としました。昨期コロナの影響を受けたのは最後の2ヶ月位でしたが、それでも全体に大きな影響を与えました。2021年度はどうなるのでしょう。
そんなJALの業績データを2012年3月期から2020年3月期までの9年分あつめて分析しました。きりよく10年分にしたかったのですが、2011年3月期のデータが公開されていなかかったため、やむなし。
過去にはライバルのANAに関する分析記事も書きました。よろしければそちらも御覧ください。
目次
業績の分析
売上高の推移(単位は[100万円])
2012.3 | 1,204,831 |
2013.3 | 1,238,839 |
2014.3 | 1,309,343 |
2015.3 | 1,344,711 |
2016.3 | 1,336,661 |
2017.3 | 1,288,967 |
2018.3 | 1,383,257 |
2019.3 | 1,487,261 |
2020.3 | 1,411,230 |
大きな成長はありませんが、緩やかな上昇傾向です。安定感があります。新型コロナウィルスの影響を受けた2020年3月期も、売上の落ち込みはあまりないですね。
営業利益の推移(単位は[百万円])
2012.3 | 204,922 |
2013.3 | 195,242 |
2014.3 | 166,792 |
2015.3 | 179,689 |
2016.3 | 209,192 |
2017.3 | 170,332 |
2018.3 | 174,565 |
2019.3 | 176,160 |
2020.3 | 100,632 |
売上高は緩やかな上昇傾向でしたが、営業利益に関しては横ばいといった感じですね。
2020年3月期は新型コロナウィルスの影響で大きく利益が落ち込みました。前年度比で4割以上の減益です。ANAは6割近く減益してたので、持ちこたえている方かもしれません。
コロナの影響は最後の2ヶ月だけです。2021年度は通期で影響を受けるはずです。さらに少ない利益、または赤字も覚悟する必要があるでしょう。
売上高営業利益率の推移(単位は[%])
2012.3 | 17.0 |
2013.3 | 15.8 |
2014.3 | 12.7 |
2015.3 | 13.4 |
2016.3 | 15.7 |
2017.3 | 13.2 |
2018.3 | 12.6 |
2019.3 | 11.8 |
2020.3 | 7.1 |
営業利益率は9年平均だと13.3%です。高い水準で安定しています。コロナの影響で下がったのは仕方ないのでしょうが、2017年辺りから右肩下がりの傾向にあるのが気になります。
ライバルのANAと比較すると、あちらは過去10年で一度も10%を超えていないので、JALのほうが利益を上げるのが上手といえます。一度死んだことで、急改革を進められたのも大きそうです。売上高ではANAに負けていますが、営業利益では勝っていることからも利益を上げるのが上手であると伺えます。
営業キャッシュフローの推移(単位は[百万円])
2012.3 | 256,673 |
2013.3 | 256,673 |
2014.3 | 248,941 |
2015.3 | 261,139 |
2016.3 | 312,394 |
2017.3 | 253,153 |
2018.3 | 281,542 |
2019.3 | 296,717 |
2020.3 | 60,030 |
営業キャッシュフローもコロナ前までは安定していました。しかし2020年度はコロナの影響をうけて、営業利益以上に大きく減少しました。
最近は運航も増えてきましたが、どこまで盛り返せるでしょうかね。
営業キャッシュフローマージンの推移(単位は[%])
2012.3 | 21.3 |
2013.3 | 20.7 |
2014.3 | 19.0 |
2015.3 | 19.4 |
2016.3 | 23.4 |
2017.3 | 19.6 |
2018.3 | 20.4 |
2019.3 | 20.0 |
2020.3 | 4.3 |
コロナ前までは20%前後で安定していました。これは非常に優秀です。
ライバルのANAと比較すると、営業利益と同様にJALのほうが上回っています。キャッシュを稼ぐ能力もこちらのほうが上といえそう。
EPSの推移(単位は[円])
2012.3 | 514.5 |
2013.3 | 473.4 |
2014.3 | 458.5 |
2015.3 | 411.1 |
2016.3 | 481.3 |
2017.3 | 456.6 |
2018.3 | 383.2 |
2019.3 | 432.1 |
2020.3 | 155.7 |
EPSはコロナ前まで大きな上昇もなく下降もなく、同じような値をブラブラしていた感じです。ANAは最近大きくEPSを上昇させていましたが、こちらは横ばいですね。JALはだらしないと捉えることもできますが、ANAはスタートの位置が低かったので、私はANAと比較してだらしないとは思わないです。
BPSの推移(単位は[円])
2012.3 | 1,071.2 |
2013.3 | 1,558.2 |
2014.3 | 1,903.5 |
2015.3 | 2,142.0 |
2016.3 | 2,325.8 |
2017.3 | 2,749.7 |
2018.3 | 3,019.5 |
2019.3 | 3,340.2 |
2020.3 | 3,249.2 |
きれいな右肩上がりです。これだけの規模の会社でここまでBPSが大きく伸びるのは珍しいですね。
これは、経営破綻があってスタートのBPSがめちゃくちゃ低かったことが要因と考えられます。元々持っていたブランドや財政支援、経営改革などで資産が少ない状態でも大きな利益が挙げられたため、このような急成長があるのだと思います。
ROEの推移(単位は[%])
2012.3 | 63.6 |
2013.3 | 36.0 |
2014.3 | 26.5 |
2015.3 | 20.3 |
2016.3 | 21.5 |
2017.3 | 18.1 |
2018.3 | 13.3 |
2019.3 | 13.6 |
2020.3 | 4.7 |
ROEはきれいな右肩下がり…ですが先程も述べたように最初は利益や売上に対してBPSが著しく小さかったためです。利益の積み重ねで資産も増え、最近になってようやくROEも適正値に収束してきたといったところでしょう。
初期の60%を超えるROEは、財政破綻によって資産を大幅減しつつも、ブランドや積み重ねてきた知見、財政支援によって利益を維持するという、当時のJALだったからこそなせた技といえるでしょう。
配当金の推移(単位は[円])
2012.3 | 0 |
2013.3 | 95 |
2014.3 | 80 |
2015.3 | 104 |
2016.3 | 120 |
2017.3 | 94 |
2018.3 | 110 |
2019.3 | 110 |
2020.3 | 55 |
2012年度に配当金が0なのは当時上場していないからです。なのであまり意味のない数字です。
2013年度以降は減配や増配を繰り返して配当を出しています。利益に応じて無理をせずに配当を出す方針ということですね。
JALは1年に2回にわけて配当を出すのですが、2020年度は後半無配でした。大きく減配しているので仕方のないことだと思います。2021年度もまあ無配でしょうね。
配当性向の推移(単位は[%])
2012.3 | 0 |
2013.3 | 20.0 |
2014.3 | 17.5 |
2015.3 | 25.3 |
2016.3 | 24.9 |
2017.3 | 20.6 |
2018.3 | 28.7 |
2019.3 | 25.5 |
2020.3 | 35.3 |
配当性向は20%~30%くらいです。個人的に好きな配当性向です。出し過ぎでもなく、出さなすぎでもない。
終わりに
JaLの業績について、2012年3月期以降のデータを紹介しました。新型コロナウィルスの影響が本格的に表れるのは2021年期からですが、わずか2カ月でも大きな影響を受けたことがわかります。
コロナの影響を受ける前はかなり優秀な経営成績を残していることもわかります。今は苦しいでしょうが、自粛要請中でも旅行に行ってしまう人が続出しているように、人間の旅行に行きたい欲はなかなか強いです。落ち着けばそれなりに売り上げや利益は元に戻るのではないかと予想しています。